2016 Fiscal Year Research-status Report
肺癌治療に伴う薬物性腎障害早期発見のための非侵襲尿中バイオマーカーの探索
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16K08404
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡邊 裕之 九州大学, 大学病院, 副薬剤部長 (30423594)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺癌化学療法 / 薬物性腎障害 / 尿中バイオマーカー / ペメトレキセド / 白金製剤 / 副作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、肺癌患者の治療薬として、ペメトレキセド(PEM)やシスプラチン(CDDP)が頻用されている。これら薬剤の重大な有害反応は腎障害であるが、PEM による腎障害の発現機序はほとんど明らかにされていない。また、CDDP による腎毒性の発現を回避するために大量輸液療法などが行われるが、十分な補液などが行われない場合の腎不全の発生率は約25~45%にも達する。従って、PEM およびCDDP ともに、患者個々の腎機能に応じた用量調節と、投与後の腎機能のモニタリングを行うなど慎重使用が求められる。一方、日常診療において、患者の腎機能は血清クレアチニン値をもとに評価するが、これは腎障害が一定以上進行しなければ上昇しないため、腎機能をより鋭敏に評価する方法に基づく使用法の開発が必要である。その候補として、尿中バイオマーカーには無侵襲で腎障害を早期からより正確に検出できる利点がある。平成28年度は以下の2つの内容を計画した。 1)PEM およびCDDP による腎障害の発現状況とリスク評価:電子カルテから、年齢、性別、血清生化学データ、尿検査データ、およびPEM、CDDP の投与量等を調査し、腎障害の発現状況をレトロスペクティブに調査し、平成28年度はCDDPに加え、カルボプラチン(CBDCA)についても併用薬の影響を考慮した解析法を検討した。 2)PEMおよびCDDP 誘発腎障害を無侵襲で鋭敏に評価可能な尿中バイオマーカー候補分子の探索:新規にPEMおよびCDDPが開始され、同意が得られた患者を対象として尿を回収し、kidney injury molecule-1 (KIM-1)、monocyte chemotactic protein-1 (MCP-1)、neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL) といった候補タンパク質を定量し、尿中バイオマーカー候補を探索することを目指し、平成28年度はこれら候補タンパク質の測定系の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究の承諾が得られた診療科において、PEM、CDDPに加えCBDCAが投与された18例の入院患者より同意を取得し、投与後3日目、7日目、14日目(7日目以降は入院継続されている場合)の尿検体(計83検体)の回収を行った。今後、一定数の検体を収集した後に、計画している項目の解析に進む予定である。一方、腎障害に特異的な尿中バイオマーカー候補の測定と評価については、MCP-1、NGALの測定法を確立した。平成29年度はKIM-1の測定法を確立するとともに、尿中バイオマーカー候補を順次評価する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、早期に必要例数の収集が達成されるように努めるともに、平成28年度に着手した副作用発現リスク評価を着実に進め、副作用回避策について検討する。また、PEM、CDDPおよびCBDCAによる腎障害に特異的な尿中バイオマーカー候補の測定と評価に関する臨床研究については、引き続き検討する。
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Causes of Carryover |
KIM-1の測定系の構築が次年度に移行し、それに充てる試薬購入支出が予定より減少したことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定どおり、試薬の購入費、学会発表の参加費、論文投稿の費用として使用する計画である。
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Research Products
(5 results)