2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K08412
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
川野 雅章 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30447528)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | polyomavirus / simian virus 40 / major capsid protein / VP1 / virus-like particle / mucosal immunology / mucosal adjuvant / vaccine platform |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリオーマウイルス科に属するsimian virus 40 (SV40) のウイルス粒子は、VP1と呼ばれる主要構造タンパク質のみで直径45 nmの正二十面体構造を構築する。我々は バキュロウイルス発現系を用いてこのVP1のみを発現させることでウイルス様粒子 (VLP: virus-like particle) を調製する技術を有している。我々の解析で、マウスの経鼻免疫でSV40 VLPに内包した外来抗原特異的に高効率で抗体産生や細胞傷害性T細胞を誘導できることが明らかになっている。このことから、VLPは粘膜免疫を効率よく賦活化できる可能性が示唆される。本研究年度において我々は、粘膜組織である、鼻咽頭関連リンパ組織 (NALT: naso-pharynx associated lymphoid tissue)、気管支関連リンパ組織 (BALT: bronchus associated lymphoid tissue) を単離した。また、腸管関連リンパ組織 (GALT: gut associated lymphoid tissue) として、腸間膜リンパ節リンパ球 (MLN lymphocyte: mesenteric lymph node lymphocyte)、腸管上皮細胞間リンパ球、粘膜固有層単核球を単離した。これらとVLPを混合することで、VLP依存的免疫応答が誘導されることを解析した。その結果、どの組織に含まれる細胞もVLPとのインキュベーションによってVLP依存的に細胞増殖が増大した。また、VLPと脾臓リンパ球を混合した際に分泌される特定のケモカインの放出が、NALT, BALT lymphocyte, MLN lymphocyteでも検出された。このことから、VLPは粘膜免疫細胞にも作用し、免疫応答の活性化を誘導する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画年度においては、NALTに対してVLPを作用させた後、免疫の成熟化マーカーの解析、ケモカインの分泌解析、および、獲得免疫誘導機構の解析を予定した。実際、本研究計画年度では、NALTとVLPを混合し、24時間培養した後、成熟化マーカーで染色してflow cytometryによる解析を行った。解析の結果、脾臓リンパ球にVLPを加えた場合とは異なり、NALTにおける細胞集団の成熟化マーカーの発現上昇は検出されなかった。一方、VLP添加によってNALTに含まれる細胞集団のVLP依存的な増殖がflow cytometryで検出された。また、NALTとVLPを混合培養した培養上精をELISA法で解析することで、VLP依存的な特定のケモカインの分泌を検出した。このことから、NALTの細胞集団では、脾臓リンパ球とはVLPに対する成熟化マーカーの発現挙動が異なるが、細胞増殖やケモカイン分泌に関しては脾臓リンパ球におけるVLPに対する応答と同様であることが確認された。成熟化マーカーの発現上昇は獲得免疫誘導にも重要であるため、まず、脾臓リンパ球においてVLP刺激によって細胞増殖、成熟化マーカーの発現上昇、および、ケモカインの分泌が最も高度に誘導される脾臓細胞中の細胞集団を探索したところ、これら全てが最も高度に誘導されている細胞集団を発見した。そこでこの結果を基に、NALTからこの細胞集団の単離を試みるか、脾臓リンパ球よりこの細胞集団を単離し、VLPを添加した後、マウス鼻腔に移植することで、抗体産生や細胞傷害性T細胞の誘導解析を行い、マウス鼻腔における移植細胞のその後の獲得免疫の誘導機構を解析する予定である。獲得免疫誘導機構に関しては脾臓リンパ球での解析を行ったため、研究進度が遅いが、他の解析に関しては順調に進んでいるため、全体として研究計画はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降の研究計画年度における研究の推進方策は、平成28年度の研究計画の遂行により、VLP添加によってNALTにおけるケモカイン分泌が誘導されるという指標を取得しており、このケモカイン分泌の上昇および下降を解析することで、マウス鼻腔リンパ球のガングリオシドGM1依存的免疫活性化解析、および、鼻腔リンパ球におけるガングリオシドGM1の発現解析が可能であるので、これらの解析を平成29年度以降に予定通り行う予定である。一方、VLP反応リンパ球のマウス鼻腔移植による獲得免疫誘導解析に関しては、平成28年度において、脾臓リンパ球の特定の細胞集団が、VLPの添加により細胞増殖、成熟化マーカー、および、ケモカイン産生の全てを高度に誘導することを発見したので、その細胞集団をVLPで活性化し、経鼻移植することで獲得免疫機構を解析する予定である。また、ガングリオシドGM1依存的免疫活性化におけるシグナル伝達経路の解明は、予定通り推進する予定である。方法としては、シグナル伝達の上流は、種々のシグナル伝達阻害剤を用いて、細胞増殖、成熟化マーカー、および、ケモカイン産生の変化を指標にして、その低下を観測することで、VLPの添加によって活性化される特定のシグナル伝達経路を同定する。また、シグナル伝達の下流は、成熟化マーカーやケモカインを発現する遺伝子のプロモーター解析を行って、VLPの添加によって転写の活性化を誘導する転写因子を同定する。また、高病原性・難治性ウイルスに対する粘膜ワクチンの開発、がんに対する粘膜ワクチンの開発は、我々はVLPの内部に外来高原を内包する技術を有しているので、平成29年度以降の研究計画年度において、バキュロウイルス発現系でVP1とVP2のカルボキシル末端に高病原性・難治性ウイルス抗原を融合したコンストラクトを共発現させることでワクチンを構築する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度研究計画においては、成熟化マーカーの発現上昇は獲得免疫誘導にも重要であるため、まず、脾臓リンパ球においてVLP刺激によって細胞増殖、成熟化マーカーの発現上昇、および、ケモカインの分泌が最も高度に誘導される細胞集団の探索を行った。この結果を指標にして、NALTよりこの細胞集団の単離を試みるか、脾臓リンパ球よりこの細胞集団を単離し、VLPと混合した後、マウス鼻腔に移植することで、抗体産生や細胞傷害性T細胞の誘導解析を行い、マウス鼻腔における移植細胞のその後の獲得免疫の誘導機構を解析する予定である。この解析は平成29年度の研究計画で行うことにした。このため、平成28年度の研究計画において購入を計画していた、細胞集団を単離するための磁性カラムなどの細胞単離試薬やその際に使用する免疫学的実験用の抗体が固定化されている磁性ビーズなどの消耗品購入費を控えたため、若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の研究計画において、細胞単離試薬や免疫学的実験用の抗体などの消耗品購入を控えたために生じた次年度使用額は、予定通り、細胞単離試薬や免疫学的実験用の抗体の購入費に充当する予定である。具体的には、磁性カラムや、抗体固定化磁性ビーズなどの細胞単離用試薬の購入を計画している。また、獲得免疫の誘導機構を解析するための、flow cytometry解析用の蛍光抗体や抗体産生解析のためのELISA解析用のプラスチック用品および抗体の購入も計画している。これを用いて、NALT、または、脾臓リンパ球よりVLP刺激によって細胞増殖、成熟化マーカーの発現上昇、および、ケモカインの分泌を最も高度に誘導する細胞集団の単離し、VLPを添加した後、マウス鼻腔に移植することで、抗体産生や細胞傷害性T細胞の誘導解析を行い、マウス鼻腔における移植細胞のその後の獲得免疫の誘導機構を解析する予定である。
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Research Products
(2 results)