2016 Fiscal Year Research-status Report
Immunopharmacological-efficacy analysis of vitamin K2 for the purpose of introduction for immunosuppressive therapy in renal transplantation.
Project/Area Number |
16K08414
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
杉山 健太郎 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50574745)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腎移植患者 / ビタミンK2 / 適応外使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、ビタミンK(VK)類が免疫抑制作用を持つことに注目した。特にVK3、VK5は、シクロスポリンと同様な強い免疫抑制作用を持ち、ヒト末梢血リンパ球からの様々なサイトカインを濃度依存的に抑制することも明らかにした。しかしながらVK3やVK5は、臨床応用されていない。そこで私は、臨床上適応を持つVK1とVK2に着目した。VK1は、低プロトロンビン血症に、VK2は、骨粗鬆症にそれぞれ適応を持つ。そこで、健常者のヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対する薬物感受性試験により、VK1とVK2の増殖抑制作用を確認した。VK1は、PBMC増殖抑制作用を持たないが、VK2は、対照群に比べPBMC増殖を有意に抑制することを明らかにした。 腎移植患者は、拒絶反応の予防のために免疫抑制療法が開始される。この免疫抑制療法は、カルシニューリンインヒビター、代謝拮抗薬、ステロイド薬から構成されている。ステロイド薬の使用により、ある頻度で骨粗鬆症の副作用が発生する。VK2は、臨床上骨粗鬆症に適応を持ち、副作用の頻度も免疫抑制薬に比べ圧倒的に少ない。よって本科学研究費を得て、腎移植に適応を持つ透析患者を対象に、PBMCにおけるVK1とVK2の感受性測定を実施し、これらVK類の免疫系に対する薬効評価を試みた。そこで横浜警友会けいゆう病院(けいゆう病院)の透析患者を対象に、VK1とVK2の薬効解析の一環として、1) 免疫抑制薬の感受性試験、2) Cytokine Beads Array Kitによる7種類のサイトカイン産生や制御性T細胞率測定試験、および3) Mitogen-activated protein kinase(MAPK)活性試験を行った。以上、VK1とVK2が腎移植患者に対して副作用の頻度の高い免疫抑制薬を離脱若しくは減量させる薬物となりうるか、健常者と透析患者のPBMCを用いて比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
透析患者のPBMCを対象として、VK1とVK2の作用を、免疫抑制薬の感受性試験、サイトカイン定量試験、および制御性T細胞(Treg)率測定試験により検討し、健常者PBMCを用いた結果と比較検討した。 透析患者PBMCのVK1とVK2に対する感受性試験の結果、健常者PBMCと同様、VK1が増殖抑制作用を持たず、一方VK2は抑制作用を持つことを明らかにした。さらにVK2が、健常者と透析患者のPBMCに対して共に殆ど同等の抑制作用を示し、臨床上有効な薬物となる可能性が示唆された。 透析患者または健常者のPBMCからのサイトカイン産生に対するVK1とVK2の作用については、PBMC培養上清中の各種サイトカインをCytokine Beads Array Kitで測定することにより比較検討した。健常PBMCからのIL-2, IL-4, IL-6, IL-10, TNF-α, IFN-γおよびIL-17産生に対し、VK1は何ら影響を与えなかったが、VK2はIL-4産生のみを有意かつ濃度依存的に上昇させた。一方、VK1、VK2共に、透析患者PBMC からのサイトカイン産生には、何ら影響を与えなかった。VK1は、健常者および透析患者PBMC中のTreg率に対して、いずれも影響を与えなかった。一方VK2は、健常者および透析患者PBMC中のTreg率を、いずれも濃度依存的かつ有意に抑制した(p<0.05)。
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Strategy for Future Research Activity |
本助成を受け、透析患者のPBMCを対象にVK1およびVK2の増殖抑制作用、サイトカイン定量試験、Treg率測定試験を行った。その結果、健常者PBMCと変わらずVK2がいずれもほぼ同等な薬効を持つことを明らかとした。これらの結果から、VK2が腎移植患者に対して、副作用の頻度の高い免疫抑制薬を離脱若しくは減量させる一助となる薬物になり得ることを示唆した。しかしながらVK2が臨床で応用されるためには、PBMCのマイトゲン応答性増殖に対する効果以外にも、免疫能に対する作用をより詳細に確認する必要があると考えられる。よって今年度は、透析患者の活性化PBMCにおけるMAPK活性の測定を行い、VK2がシグナル伝達経路を介した免疫能に及ぼす影響についても検討する予定である。またビタミンK2以外にも免疫抑制療法の一助となり、免疫抑制薬の副作用を減少させることが可能である天然化合物等についても、併せて検討を行う予定である。さらに可能であれば本学姉妹校である東京医科大学との共同研究を発展させ、他の自己免疫疾患にもビタミンK2が有効であるか否か検討を行う予定である。
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Research Products
(4 results)