2016 Fiscal Year Research-status Report
アントラサイクリン系抗がん剤と活性酸素との関係;その解明のための情報の再構築
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16K08420
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
水谷 秀樹 金城学院大学, 薬学部, 教授 (80397504)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗がん剤 / アントラサイクリン / DNA損傷 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、アントラサイクリンと活性酸素 (ROS)との関係を物理化学的な観点から生物学的な観点までを幅広く明らかにし、アントラサイクリンの作用機構と創薬に関する基盤となり得る活性酸素シグナル伝達に関する情報を再構築することである。今年度は、ドキソルビシン (DOX)、エピルビシン (EPI)、ダウノルビシン (DNR)、イダルビシン (IDR)、アクラルビシン (ACL)を用いてCu(II)存在下でのDNA損傷性とPI染色による細胞死について検討した。 実験には、プラスミドDNA(pBR322)を用い、アントラサイクリンと金属イオンをリン酸緩衝液で反応させた。反応後、アガロースゲル電気泳動でDNA 損傷を検出した。O2-の測定はシトクロムc 還元法で行い、550 nmの吸光度を測定した。ヒト白血病細胞HL-60及びHL-60由来catalase高活性のHP100細胞を用い、PI染色を指標とした細胞死をTali (Image-based Cytometer)で測定した。 Cell-freeの実験において、アントラサイクリン単独では DNA 損傷は認められず、Cu(II)存在下でアントラサイクリンは濃度依存的にDNAを損傷したが、DNRは損傷しなかった。この損傷の強度は、DOX≒EPI > THP ≒ IDR > ACR >> DNRであった。EPIによるDNA損傷はmethionalおよび Cu(I) と特異的に結合する bathocuproine により抑制されたが、フリー OH ラジカルスカベンジャーでは抑制されなかった。また、Cu(II) 存在下でEPI は O2-を生成した。細胞実験において、EPIとDNRによる細胞死は、HL-60 ≒ HP100であった。 DNR以外のアントラサイクリンは Cu(II) 存在下でDNA を損傷した。その強度は化合物の構造により異なり、その損傷にはROSの関与が考えられた。一方、EPIとDNRによる細胞死にはROSの関与が認められなかった。 平成29年度は、上記の結果を踏まえ、8-OHdG、酸化還元電位、分配係数などを測定することにより、アントラサイクリンとROSとの関係を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、電気化学検出器を購入し、酸化ストレスマーカーである 8-OHdGを測定する予定であったが、機器操作の習熟に思いのほか時間が掛かり、測定できていない。来年度には、機器操作の習熟も着実に進んでいるため、問題なく測定できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、DNA損傷に対する細胞応答に関する免疫化学的な新しい手法を習得している。この方法を今後の研究に利用できるようにする予定である。
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Causes of Carryover |
電気化学検出器による8-OHdGの測定ができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
従来の研究計画に加え、電気化学検出器による8-OHdGの測定を行う予定である。
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Research Products
(6 results)