2016 Fiscal Year Research-status Report
味受容機構を利用したバイオセンサの開発と製剤設計への応用
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16K08425
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
吉田 都 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (20369028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 享弘 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (70203536)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 苦味 / 味覚センサ / バイオセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品の苦味は患者にとって苦痛であり、コンプライアンス、QOLの低下につながる。多くの製剤で医薬品の苦味を抑制する技術(苦味マスキング)が施されているが、苦味を抑制できていない製剤や、処方の都合上、粉砕した医薬品を服用する場合などには強い苦味を伴うことになる。また、低含量製剤の液剤化や小児用製剤、口腔内崩壊錠において、医薬品の苦味が問題になることがある。苦味物質によっては、味覚センサに反応しにくい物質もあり、測定結果に関しては、ヒト官能試験との相関性を考慮することが必要となってくる。従って、麻薬性鎮痛薬や向精神薬などヒト官能試験を行い難い医薬品に関しては、苦味の評価が困難であるという問題がある。また、現在多くの施設に導入されている味覚センサは、味蕾細胞に見立てた細胞膜成分と苦味物質との結合を in vitroで評価した系である。味蕾細胞中の味受容体と呈味物質と結合によって味受容が行われているため、全ての味受容反応を厳密に評価しているとは言い難いのが現状である。 研究代表者は、これまでに苦味受容体と苦味物質との結合性を利用した苦味評価方法を確立した。この方法を用いると、従来の細胞膜成分と苦味物質との結合を in vitroで評価した味覚センサと比べると感度が上がり、従来の味覚センサでは測定できなかった医薬品の苦味も測定可能となった。しかしながら、味覚味蕾細胞を用いる場合、動物から味蕾細胞を摘出し、培養し、苦味測定可能な状態とするまでに時間およびコストがかかり、汎用性が低いことが難点として挙げられる。また、そこで本研究では、より簡便な味覚評価系の確立を目的として、苦味受容体および電位依存性プロトンチャネルを共発現させた細胞を用いたバイオセンサによる医薬品の定量的苦味受容反応および時間依存的苦味受容反応の評価方法の確立を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間(平成28年度~30年度の3年間)のうち、前半の2年間において、苦味受容体および電位依存性プロトンチャネルを共発現させた細胞を用いたバイオセンサによる医薬品の定量的苦味受容反応および時間依存的苦味受容反応の評価方法の確立を行う。cDNAの作製苦味受容体hTAS2Rおよび膜電位依存性プロトンチャネルVSOP1(Voltage-sensordomain only protein1)の遺伝子に関してヒト腎臓cDNA(クロンテック社)を鋳型にPCRにて全長鎖cDNAを得た。さらにcDNAをHEK293細胞に導入し、hTAS2RおよびVSOP1をそれぞれ強制発現した細胞系を作製している。
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Strategy for Future Research Activity |
hTAS2RおよびVSOP1をそれぞれ強制発現した細胞系の作製さえ完了すれば、バイオセンサ膜の作製とそれを用いた膜電位変化の測定、時間依存的苦味受容反応の評価方法の確立等を行うが、こちらの条件設定は現状の味覚センサと類似しており、時間がかかり過ぎることはないと思われる。
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Causes of Carryover |
苦味受容体hTAS2Rおよび膜電位依存性プロトンチャネルVSOP1(Voltage-sensordomain only protein1)の遺伝子に関してヒト腎臓cDNA(クロンテック社)を鋳型にPCRにて全長鎖cDNAを得る実験について、cDNAを委託して作製することを考えたが、高価であったため、当研究室で技術を修得しながら作製を試みているため、1つ1つの工程に時間がかかってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要な技術はほぼ修得出来たため、苦味受容体および膜電位依存性プロトンチャネル共発現細胞の作製さえ完了すれば後は予定通りに進行できると考えられる。
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