2018 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉転換に着目した新規バイオマーカー探索による脳、腎糖尿病疾患の治療法開発
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16K08439
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
齊藤 成 藤田医科大学, 医学部, 講師 (10456444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹生谷 正史 東北医科薬科大学, 医学部, 講師 (00228256)
大野 伸彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (10432155)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオマーカー / SGLT / 高脂肪食負荷マウス / メタボリックシンドローム / 慢性腎機能障害 / SBF-SEM / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、予定されていた研究計画の遂行が不十分であった。1. MicroCTの活用:藤田医科大学のmicroCTを用いて、既に包埋済みのエポンブロックとパラフィンブロックを用いて腎臓の血管構築とネフロン構造を確認してみた。残念なことに、ネフロンと血管の関連を分別できるほどの解像度が得られなかった。また、上皮間葉転換の際に基底膜と上皮細胞の突起を明瞭に区別するために、レクチンーgold染色を行う方法についても検討してみた。同様にmicroCTでの血管とネフロン構造の分別には至らなかった。TEM観察では、レクチンーgold染色を確認できたが、同一サンプルを用いて、SBF-SEM観察を行うと、上皮細胞内の細胞小器官の膜コントラストを得るには至らなかった。一旦、レクチンにて基底膜を染色する方法は中断することにした。2. SBF-SEMによる3D電顕解析:2 型糖尿病性上皮障害では、腎臓の近位尿細管上皮細胞、肝臓の肝細胞、小腸の吸収上皮細胞では、共通してスフィンゴ脂質を示唆するの蓄積像が認められた。そのため、腹部内の代謝臓器では共通してスフィンゴ脂質の蓄積によるオートファジー異常を惹起し、SGLT阻害剤の投与により、上皮細胞障害が改善することも共通していた。そこで、全身に影響するバイオメディエーターのより分別に優れている同定方法への変更が必要であると考えた。3:バイオマーカー検索方法の再検討:藤田医科大学内でマスイメージングを専門としているスタッフと相談し、高脂肪食負荷マウスにSGLT阻害剤を投与前後での尿のリン脂質と蛋白の解析を同一個体の尿検体と血清を用いて測定することとした。また、投与直前直後との比較と投与後1週間の尿と血清を採取して行い、全身のSGLT阻害剤の影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
自然科学研究機構 生理学研究所から藤田医科大学への人事異動(平成30年4月1日)に伴い、平成30年度に予定していた電子顕微鏡、メタボローム解析、動物実験の再開に実質的に半年以上の遅れが生じた。その為、平成31年度に実験計画を延長することにした。現在では研究環境を再構築し、光学顕微鏡(レーザー共焦点顕微鏡)および電子顕微鏡(SBF-SEM・FE-SEM・TEM)、オミックス解析機器 (質量分析装置、次世代型遺伝子解析装置など)が十分に利用できる環境となった。しかしながら、実験計画を立案した3年前に比べ、バイオマーカーを探索する上でのメタボローム解析の技術が著しく進歩した為、生化学解析の解析方法の見直しが必須であった。その為、藤田医科大学内のメタボローム解析の複数の専門家および国際シンポジウムで研究データの発表を行い、最先端の情報の交換を行う事にした。また、糖尿病性腎障害の動物モデルへのSGLT阻害剤投与下での質量分析イメージングの文献を検討した上で、複数の解析型顕微鏡(STEM-EDX、ラマン分光顕微鏡など)とリン脂質解析のデータと比較検討した結果、計測段階では予測できなかった、解析方法の違いによる組織分布上でのデータの不一致が起きる事が理解できた。これらの情報収集の結果、質量分析イメージングはイオン化された物質を検出するのに比べ、ラマン分光顕微鏡は光子に対する物質から出力されるラマン分光を用いる為、電子顕微鏡上で確認できるようなリン脂質が硬く凝集したような構造物は光波長の変化のみを検出を得意とするためであると推測している。生化学解析に自動化2次元電気泳動装置を質量分析装置を組み合わせることで、研究の主目的である糖尿病性脳腎機能障害に対するSGLT阻害剤の薬理作用に関与するバイオマーカーの検索を進めるように変更し、延長した最終年度の実験を進めることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
腹腔内代謝臓器(腎臓・肝臓・膵臓)と脳神経組織(海馬)のオミックス解析を迅速化するために、蛋白解析と脂質解析の方法を変更した。SGLT阻害剤投与前後での変化を解析するために、蛋白解析では自動化された2次元電気泳動装置(SHARP Auto2D)を用いることで、簡易化と再現性を向上した形でタンパク質分離を行い、SGLT阻害剤投与前ー投与後でのスポット分離を行い、スポット部分を切り抜いた上で、MS解析を行う。その際に、研究の主目的である上皮間葉転換を起こしている臓器組織をターゲットにするため、上皮間葉転換のマーカー抗体によるウエスターンブロッティング等の発現解析を行い、その変動タンパク質との相関関係を確認する。また、実験計画にそって、細胞膜、ミトコンドリア膜などの膜蛋白用の抽出カラムを用いて、同様にSGLT阻害剤投与前ー投与後でのスポット分離を行い、分画の異なる膜蛋白のMS解析を行う。バイオマーカー材料として、血清と尿を用いて、同様にリン脂質と蛋白解析を行い、臓器との関連を比較し、バイオマーカーの候補を絞っていく。
また、腎臓の近位尿細管上皮間葉転換の際に上皮細胞と間質組織内の筋線維芽細胞のKi67の発現パターンの変化が認められたため、マウスへのBrdU投与を行い、M期の細胞を同定できるようにした上で、その組織スライスを用いて、細胞周期マーカー(Ki67, pH3, BrdU)、細胞周期のチェックポイントマーカー(P21やP27)、神経細胞の発現マーカー(c-Fos)の抗体染色を行い、核のDABによる重金属でマーキングを行い、SBF-SEMの3D電顕解析を行う。
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Causes of Carryover |
自然科学研究機構 生理学研究所から藤田医科大学への人事異動(平成30年4月1日)に伴い、平成30年度に予定していた電子顕微鏡、メタボローム解析、動物実験の再開に実質的に半年以上の遅れが生じた。その為、平成31年度に実験計画を延長することにしたため、使用額の差額を次年度に繰り越した。
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Research Products
(4 results)