2017 Fiscal Year Research-status Report
BMP・Wntシグナルネットワークによる全前脳胞症(HPE)発症機構の解明
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16K08444
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹林 公子 (鈴木) 広島大学, 両生類研究センター, 研究員 (00397910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 厚 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (20314726)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経誘導 / 頭部形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
全前脳胞症(holoprosencephaly; HPE)は前脳と顔面正中部の形態形成が異常になる先天性奇形である。遺伝的原因として幾つかの染色体遺伝子座が明らかになりつつあるが、その発症機序はよく分かっていない。研究代表者は独自のスクリーニング法により、BMPシグナルを抑制して神経を誘導する因子としてジンクフィンガータンパク質Biz (BMP inhibitory zinc finger)/zbtb14を単離し、BizがさらにWntシグナルを促進して後方神経を形成することを見出した。興味深いことに、Bizと、その結合因子 (Biz associated protein, Bap) は、それぞれが全前脳胞症の原因遺伝子座に位置する。本研究は、神経形成におけるBizとBiz結合因子(Bap)の機能的な相互作用、およびBMP・Wntシグナルネットワークに対する作用機序を解析し、全前脳胞症(HPE)発症機構の解明を目的としている。 今年度は、これまでに行なってきたBiz単独の機能解析を論文として報告した。さらにBizおよびBapの過剰発現実験により、BizとBapの両者を組み合わせた場合、後方神経マーカーhoxb9の発現が、より強く誘導されることに加え、全前脳胞症(HPE)の原因遺伝子と考えられている遺伝子群の一つであるtgif1の発現がBiz単独、およびBizとBapを共発現したときに大きく変化することがわかった。また、Bapの機能阻害実験をおこなうため、ツメガエルL、S各染色体由来の遺伝子を単離、それぞれの塩基配列を確認してLとS両方の染色体由来遺伝子を同時に翻訳阻害することが期待できるモルフォリノオリゴを作製した。Biz単独に比べて、BizとBap両遺伝子の機能を阻害した胚で、hoxb9の発現が、より強く低下していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでに行なってきたBizの機能解析を論文として報告することができた。さらに前年度に引き続き、BizおよびBap過剰発現実験により、BizとBapの機能的な相互作用を調べた。神経誘導や頭部形成に対する影響は、背腹軸および前後軸マーカー遺伝子の発現について、アニマルキャップ(未分化、かつ多分化能を持つ外胚葉組織片)を用いた定量的RT-PCRや、WISH法で調べることにより解析した。その結果、BizとBapを共発現させた場合に後方神経マーカーhoxb9の発現が、より強く誘導されることに加え、全前脳胞症(HPE)の原因遺伝子と考えられている遺伝子群の一つであるtgif1の発現がBiz単独、およびBizとBapを共発現したときに大きく変化する興味深い結果を得ている。 また、Bapの機能阻害実験をおこなうため、ツメガエルL、S各染色体由来の遺伝子を単離、それぞれの塩基配列を確認してLとS両方の染色体由来遺伝子を同時に確実に翻訳阻害することが期待できるモルフォリノオリゴを作製した。Biz単独に比べて、BizとBap両遺伝子の機能阻害した胚で、hoxb9の発現がより強く低下していることが明らかになった。したがって、BizとBapが協調して神経形成に関与していることが強く示唆された。 さらにBizとBapの協調作用機構を詳細に調べるため、エピトープタグを付加したBap、および各機能ドメインを欠損したBapコンストラクトを作製済みである。よって、おおむね研究は順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はBiz単独に比べて、BizとBap両遺伝子の機能を阻害した胚で、hoxb9の発現がより強く低下していることを明らかにした。今年度は、さらに多くの背腹軸および前後軸マーカー遺伝子の発現について、アニマルキャップを用いた定量的RT-PCRや、WISH法を用いて引き続き解析を行う予定である。また、全前脳胞症(HPE)の原因遺伝子と考えられている遺伝子群についても、その遺伝子発現への影響を調べる。 BizとBapの過剰発現や機能阻害を各遺伝子単独および複数を組み合わせた条件で行い、BMPとWntシグナルへの影響を解析することにより、神経形成過程においてBizとBapがこれらのシグナルを調節する機構を調べる。また、既に作製済みのエピトープタグを付加したBap、BizやBMP・Wntシグナル調節因子群を様々な組み合わせで培養細胞に発現させた後、共免疫沈降法を用いて各タンパク質間の結合を解析する。発現量と構成因子の組み合わせを変化させて、構成因子間の結合様式(競合と相乗効果)を解析する。 さらに、各タンパク質のドメイン欠失変異体を用いて各構成因子間の結合に必要な機能ドメインを同定し、BizとBapが各BMP・Wntシグナル調節因子を制御する作用機序を生化学的に明確にする予定である。
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[Presentation] Neural specific kinase promotes early neural development in Xenopus embryos2018
Author(s)
Regina Putri Virgirinia, Nusrat Jahan, Maya Okada, Kimiko Takebayashi-Suzuki, Hitoshi Yoshida, Makoto Nakamura, Hajime Akao, Fatchiyah Fatchiyah, Naoto Ueno and Atsushi Suzuki
Organizer
Hiroshima University International Symposium: Amphibian development, regeneration, evolution and beyond
Int'l Joint Research
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[Presentation] Neural specific kinase promotes early neural development in Xenopus embryos2017
Author(s)
Jahan, N., Virgirinia, R.P., Takebayashi-Suzuki, K., Okada, M., Yoshida, H., Akao, H., Fatchiyah, F., Ueno, N. and Suzuki, A.
Organizer
第50回発生生物学会大会
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