2017 Fiscal Year Research-status Report
神経回路形成及び高次脳機能におけるセマフォリンの機能解析
Project/Area Number |
16K08447
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
谷口 雅彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (70260346)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 軸索ガイダンス / 脳神経系 / ノックアウトマウス / 神経発生 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な脳神経系において機能的な神経回路が形成されるためには、標的細胞への神経軸索の正確な投射が必要である。この過程を制御する分子として軸索ガイダンス分子が存在し、セマフォリン、スリット、エフリン、ネトリンが同定されている。これらの分子がどのように神経回路形成に関与しているかという分子機構ははまだあまり研究が進んでいない。主として反発性軸索ガイダンス分子として機能するセマフォリンに注目して研究を進めている。本研究の目的は、神経回路形成及び高次脳機能におけるセマフォリンの機能を解明することである。セマフォリンは当初軸索ガイダンス分子として同定され、神経系での研究が進んできた。その後の研究によりセマフォリンは約30種類同定されており、セマフォリンはウイルスからヒトに至るまでの生物に存在する。セマフォリンは神経系以外でも免疫系、癌発生、血管形成、骨形成等に関与しており、創薬のターゲット分子となり得る分子である。 以前マウスにおいて新規セマフォリンであるSema3Gのクローニングに成功した。現在は、Sema3Gに注目して研究を進めている。Sema3Gは神経系の研究がほとんど進んでいない。Sema3Gは成体脳において主に小脳の顆粒細胞層と海馬に発現している。Sema3Gの機能解析が本研究課題の最大の目的である。Sema3Gの機能解析を行うためにノックアウトマウスを作成した。現在はノックアウトマウスを使用して形態学的解析と行動学的解析を主に行っている。形態学的解析では様々な抗体を使用した解析を海馬と小脳に対して行ったが、現在の所明らかな異常はまだ見付けられていないので、抗体の種類と染色法を増やして解析を続けているところである。行動解析に関しては、現在解析中である。ある程度の変化は認められるが現在詳細な解析を継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経回路形成及び高次脳機能におけるセマフォリン(特にSema3G)の機能を解明することを目的としている。Sema3Gのノックアウトマウスはすでに作成に成功している。このマウスにはLacZ遺伝子が挿入してあるので、X-Gal染色によりSema3Gの発現を簡単に解析できる。このマウスを使用してSema3Gの発現を詳細に解析した。その後、形態学的解析と行動学的解析を当初の予定通りノックアウトマウスを使用して解析を進めている。行動解析にはオスマウスが大量に必要なのだが(ほぼ同じ週齢のノックアウトマウスとコントロールマウスをそれぞれ約20匹以上)、マウスを増やすのに予想より時間が掛かったが、現在は問題なく行動解析を進めている。このようにほぼ順調に研究は進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も今までと同様にセマフォリンの機能解析を進めていく計画である。最大の目的はノックアウトマウスを使用した形態学的解析と行動学的解析だが、今後は培養系を使用したシグナル伝達の解析も進めていきたい。この解析に使用する計画の発現ベクターを現在作成中である。形態学的解析には解析方法が多種類存在するので、様々な方法を試してみることを計画している。これらの解析により、神経系におけるセマフォリンの機能を明らかにして、高次脳機能や神経疾患治療に有益な成果も得たい。
|
Causes of Carryover |
形態学的解析に使用した抗体等が計画より安かった。マウス飼育の費用も計画より安かった。また、出張が計画より少なかったために研究費の次年度使用が生じた。 使用計画だが、申請書に記載した計画通りに研究を進める予定である。具体的には、セマフォリンノックアウトマウスの形態学的解析、行動学的解析、シグナル伝達解析である。これらの解析において生化学実験試薬、染色用抗体、プラスチック器具、マウス等を使用するので、これらに研究費を使用する。次年度使用になった研究費の分が増えたので、より多くの抗体や試薬が購入できるので、さらに解析が進むと考えられる。また、本年度は出張の回数が計画より多くなる可能性がある。
|
Research Products
(1 results)