2016 Fiscal Year Research-status Report
シクリッド咽頭顎骨の神経‐骨代謝クロストークに関わる神経回路の解析
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16K08448
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
井村 幸介 横浜市立大学, 医学部, 講師 (10415086)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 咽頭顎 / シクリッド / ティラピア / 破骨細胞 / TRAP / 末梢神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクリッド下咽頭顎では、同種個体間で植物食性個体に比べ貝類を餌とする個体では、発達した臼状歯と強固な骨梁がみられるなど、食性に応じた可塑的変化が報告されている。これは、食性に応じた機械的負荷の感知により、リモデリングが生じる可能性を示す。また、末梢神経破壊により、多生歯の萌出が抑制されることも報告されている。このように、神経系が硬組織リモデリングに影響を与える可能性が高い。齧歯類では、感覚神経が骨代謝に重要な役割を担うと言われる。しかしながら、中枢を含めた神経系全体の骨代謝に対する役割は明らかでない。我々は、骨‐中枢側まで俯瞰可能なモデルとして、魚類は有効であると考える。 これまで、ティラピア下咽頭顎骨内の神経終末の存在を明らかにし、これらの末梢神経のoriginを調べてきた。今回、可塑的変化が生じるのか明らかとなっていない上咽頭顎にも注目して分布する末梢神経を調べた。その結果、上咽頭顎に分布する神経束は下咽頭顎に分布する神経束に合流しており、迷走神経の臓性枝と考えられる枝の吻側にある枝であり、神経節を経て迷走葉の外側にいたることが観察された。上および下咽頭顎骨に分布する末梢神経は、少なくとも共通の迷走神経束をoriginとすることが分かった。また、下咽頭顎の骨内において、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)をマーカーとして破骨細胞を可視化してその分布を検討した結果、咽頭歯に近接する骨領域に多くの破骨細胞が観察されるなど、破骨細胞の機能を反映すると思われる像を捉えることができた。さらに骨内の末梢神経との二重染色では、神経終末様の構造とTRAP陽性の破骨細胞が近接している像を捉えており、これは神経系と骨構成細胞の相互作用を示唆しているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
咽頭顎に分布する末梢神経枝のoriginについては、迷走神経の臓性枝と考えられる枝の吻側に存在する枝であることが肉眼解剖学的に観察され、上および下咽頭顎骨に分布するそれぞれの末梢神経は、少なくとも共通の迷走神経束に由来することが分かった。また、下咽頭顎の骨内において、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼをマーカーとして破骨細胞を可視化することができた。さらに骨内の末梢神経との二重染色では、神経終末様の構造とTRAP陽性の破骨細胞が近接している像などを捉えることができた。 以上の結果のうち、破骨細胞と下咽頭顎骨内の末梢神経の分布を二重染色で検討できたことは、設定していた目標のほとんどの内容をおおむね達成する結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の結果をより信頼性のあるものにするために、実験条件をより最適化する。特に、破骨細胞と末梢神経の二重染色では脱灰試料を用いていたので、もう少し染色に最適な脱灰条件を見つけることができると考える。このことによって、神経と破骨細胞の局在性をより明確にすることができることを期待している。 次年度は骨内の末梢神経が、中枢のどのような神経回路に関わるのかを明らかにするのが大きな目標であるのでトレーサー実験に着手する。手術のアプローチがやや難しいことが予想されているので、当面は固定標本による簡便なトレーサー実験からスタートして、手術時のアプローチも含めて十分に検討していきたい。固定標本では、末梢側(骨側)からアプローチしてトレーサーを注入し、神経節細胞の標識を一次目標とする。咽頭顎に分布する末梢神経と関係性のある神経節細胞が、おおよそのところで明らかになったら順次、神経節細胞にトレーサーを注入して、中枢領域の投射領域を検討する。二次目標としては、明らかとなった神経節細胞の中枢投射領域をターゲットに、手術によってトレーサーを注入して、これまでの固定標本の結果と比較して神経回路を検討する。 前年度の結果がまとまりしだい、骨内の末梢神経と破骨細胞の分布について論文作成をスタートする予定である。加えて、神経回路の結果が十分に出ているようであれば、これもどのように論文のなかでデータとして取り入れるのか検討を開始する。
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