2018 Fiscal Year Research-status Report
上皮細胞間ジャンクションの再編成におけるDLG1の機能解析
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16K08462
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
向後 晶子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20340242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向後 寛 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20282387)
野村 隆士 藤田医科大学, 医学部, 講師 (20325161)
松崎 利行 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30334113)
下村 敦司 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 教授 (50340237)
松浦 勉 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80181692)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DLG1 / コルチ器 / 収斂伸長 / ジャンクション再編成 / 非筋型ミオシン / PAR3 / 極性 / 細胞間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
DLG1は、上皮細胞の極性形成、維持に関わるPDZ蛋白質である。マウスDlg1遺伝子の欠損は、各種器官形成で上皮の収斂伸長を阻害する。本研究の目的は、収斂伸長の駆動力となる細胞間ジャンクション再編成におけるDLG1機能の解明である。当初は、胎仔マウスコルチ器のライブイメージング解析を行う予定だったが、2017年に米国のグループにより、同手法によるコルチ器発生動態が報告された。この結果を受け、独自のライブイメージング法確立は保留し、固定試料を用いた解析へと方針を変換した。マウス収斂伸長系では、無脊椎動物系で示された収斂伸長メカニズムをどの程度共有しているのか、検証されていない点が多い。今後ライブイメージングで多くの形態学的知見が得られたとしても、その解釈やDLG1機能の解明のためにはこの検証が不可欠と考えたためである。 無脊椎動物の収斂伸長系では、非筋型ミオシンII(NMII)は退縮中のジャンクションに集積して退縮を担う。マウスコルチ器の収斂伸長にもNMIIは必要だが、ミオシン重鎖3種類の機能分担、作用時の組織内分布等は不明である。そこで、伸長時のコルチ器でNMIIA,BおよびCの局在変化を解析し、これらの蛋白質の、細胞種、細胞分化段階特異的な発現パターンを明らかにした。NMII活性化および活性調節に関わるとされるリン酸化ミオシンとPTENについても解析を試みたが、現時点ではこれらの分子の免疫染色条件の確立には至っていない。次に、ショウジョウバエ上皮収斂伸長の新規ジャンクション形成過程で、E-cadherinの細胞膜への表出に必要なBaz/Par3に注目し、抗Par3抗体によるマウスコルチ器染色条件を確立した。解析の結果、コルチ器組織分化でPar3の組織内分布が分化段階特異的に変化することが初めて明らかになり、その結果を2018年3月の日本解剖学会で発表した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り、本研究では、胎仔マウスコルチ器の細胞間ジャンクション再編成におけるDLG1機能を解析する手段として、ライブイメージング解析手法を確立し、細胞間ジャンクション形態の動態を直接的・経時的に解析することを計画していた。しかし2017年に発表されたコルチ器ライブイメージングが発表を受けてこの計画を保留させているため、本研究当初の計画と比較すれば実施状況は遅れていると判断せざるを得ない。一方で、その代替として、細胞間ジャンクション退縮の重要分子としてのNMII、新規細胞間ジャンクション形成の重要分子としてのE-cadherinの機能調節に着目した解析に着手し、特にPAR3の組織内分布についての解析方法を考案、確立し、これにより興味深い新規の結果を得ることができた点は大きな進捗であったと自己評価している。したがって全体的な評価としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度、NMIIの活性調節に関連する各種蛋白質の組織内分布の可視化を目指したが、良好な結果を得ることができなかった。そこでリン酸化ミオシン、ROCK、PTENについて、さらに染色条件を検討して条件の確立を目指す。一方、平成30年度に検出方法を確立したPAR3については、聴覚上皮分化段階のジャンクションにおける分布がダイナミックに変動することが示された。PAR3は各種培養細胞でE-cadherinの細胞膜表出に寄与すると報告されショウジョウバエ収斂伸長で重要な役割を果たすが、コルチ器での機能や動態は不明である。今後、PAR3の機能に注目してコルチ器の新規ジャンクション形成の調節機構を検証する。 以上のように、マウスコルチ器収斂伸長におけるジャンクションの退縮と新生の調節メカニズムを、それぞれNMIIとE-cadherinの調節機構に着目して検証し、ショウジョウバエ上皮との共通点、相違点を同定し整理する。この情報をもとに、DLG1分子の欠損がどのステップに影響するのかを明らかにする。これまでの解析結果からは、DLG1は新規ジャンクションの形成過程に寄与する可能性が示唆されているので、これについてさらに検証を行う。また期間中に得られた結果を論文および学会にて発表する。
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Causes of Carryover |
ライブイメージング法の確立を中断しており各種機器の購入を見合わせているため、当初計画の予算が未使用となっている。これについては今後の研究方策遂行のために新たに必要となる機器、動物の導入のために以下の通り充当する。 ① PAR3およびNMII関連分子の詳細な解析を行うために必要となる遺伝子改変マウス系統の入手、維持。 ②試料の観察に現在使用している共焦点レーザー顕微鏡への、コルチ器全載標本の観察を可能にする電動ステージの導入。
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Research Products
(1 results)