2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08464
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
藤原 武志 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (50546786)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞間接着装置 / ネクチン-1スポット / マウス嗅球外網状層 / 細胞膜貫通分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス嗅球外網状層の深層部において、僧帽細胞側方樹状突起間などに認められる新規細胞間接着装置ネクチン-1スポットの形成や作用機構を明らかにすることを目的として、ネクチン-1スポットとの物理的・機能的な相互作用が期待できる細胞膜貫通分子の探索を行った。 乳腺の異種上皮細胞間接着において、ネクチンはプロラクチン受容体と細胞膜で共局在し、また裏打ちタンパク質であるアファディンの局在が認められないことから、ネクチン-1スポットと同様な新規細胞間接着装置を形成することが知られている。ネクチン-1スポットも受容体などの細胞膜貫通分子と共局在して機能しうると考え、嗅球での発現が知られている細胞膜貫通分子のうち、ネクチン-1スポットと共局在するものをマウス嗅球初代培養細胞やマウス嗅球組織を用いた免疫細胞・組織化学的手法により探索した。その結果、嗅球外網状層に局在が認められる受容体型チロシンキナーゼ(RTK)とカリウムチャネル(KCh)を得た。特にこのKChは、嗅球外網状層の深層部に局在が認められた。また、これらRTKとKChの嗅球外網状層における局在は、ネクチン-1ノックアウトにより減少した。さらに、僧帽細胞マーカーとして用いられているPGP9.5陽性の嗅球初代培養僧帽細胞の重なり合う樹状突起において、ネクチン-1スポットとRTKあるいはネクチン-1スポットとKChとの共局在が認められた。これらの結果は、ネクチン-1スポットがRTKあるいはKChと共局在し、マウス嗅球外網状層におけるRTKあるいはKChの局在を制御することを示唆した。これらRTKとKChは、ネクチン-1スポットと物理的・機能的に相互作用する細胞膜貫通分子であることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の本研究では、マウス嗅球外網状層において新規細胞間接着装置ネクチン-1スポットの形成や作用機構を明らかにすることを目的として、ネクチン-1スポットとの物理的・機能的な相互作用が期待できる分子を探索し、その結果として、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)とカリウムチャネル(KCh)を得た。これらRTKとKChは、ネクチン-1スポットの形成や作用に関係する最も上流に位置する候補分子である可能性があり、ネクチン-1スポットの形成や作用の分子機構を明らかにする基盤ができつつあると考えている。一方で、ネクチン-1スポットとRTKあるいはネクチン-1とKChとの生化学的手法による物理的相互作用の有無や、ネクチン-1スポットとRTKあるいはネクチン-1スポットとKChとの分子細胞生物学的手法による機能的相互作用の有無についての検討にまだ着手できていない。このことから、平成29年度では、ネクチン-1スポットとRTKあるいはネクチン-1スポットとKChとの生化学的・分子細胞生物学的手法による物理的・機能的な相互作用の検討を推進していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下に記す方策をもとにして研究を推進していく予定である。 1.マウス嗅球初代培養僧帽細胞の重なり合う樹状突起において、ネクチン-1スポットと受容体型チロシンキナーゼ(RTK)あるいはネクチン-1スポットとカリウムチャネル(KCh)との共局在が認められたことから、ネクチン-1スポットとRTKあるいはKChとの物理的・機能的な相互作用の有無について検討していく。(1)物理的な相互作用については、マウス嗅球組織を可溶化して得られたタンパク質の抽出液を用いて、免疫沈降法によりネクチン-1とRTKあるいはネクチン-1とKChとの共沈降の有無を生化学的に検討することを考えている。(2)機能的な相互作用については、マウス嗅球初代培養僧帽細胞の重なり合う樹状突起の枝分かれの程度に対するRTKあるいはKChの影響を検討する。平成28年度の本研究においてRTKあるいはKChのマウス嗅球外網状層における局在が、ネクチン-1ノックアウトにより減少することを示した。この結果をもとに、ネクチン-1ノックアウトにより減少する重なり合う樹状突起の枝分かれの程度が、マウス嗅球初代培養僧帽細胞に導入したRTKあるいはKCh遺伝子の強発現により野生型のものにまで回復するか否かを検討することなどを考えている。 2.ネクチン-1スポットとRTKあるいはKChとの物理的・機能的な相互作用が認められなかった場合、引き続きネクチン-1スポットと共局在する細胞膜貫通分子を免疫細胞・組織化学的手法により探索し、物理的・機能的な相互作用の有無を検討していくことを考えている。
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