2016 Fiscal Year Research-status Report
イモリとマウス心臓の再生能力を規定するシグナルと心筋細胞の応答能の解明
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16K08467
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
林 利憲 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60580925)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イベリアトゲイモリ / 心臓再生 / 細胞周期 / 心筋細胞 / cyclin D |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イモリとマウスの再生能の違いが生じる機構を解明する目的で、イモリを用いた再生開始シグナルと、それに応答するcyclin D1の転写制御領域を同定して、同様の領域がマウスに存在するか、存在するならなぜ応答できないかを調べる。さらにイモリで同定したシグナルが、損傷後のマウス心臓でどこまで機能しているかを示すことを目指す。心臓再生を開始させるシグナル機構を解明する上では、そのシグナルに応答するcyclin D1の転写制御領域の同定をより早く進めることが重要であると考えられた。そのため本年度は、マウスとイモリそれぞれのゲノム配列からクローニングした転写制御領域の候補配列(約10 kb)を、異なる長さに区切った上でレポーター遺伝子につないだコンストラクトをイモリに導入する実験を行い、転写制御に関わる領域を絞ることに成功した。また、イモリとマウスの種間におけるcyclin D1プロモーターの機能比較を進める為に、マウスとイモリそれぞれから単離した転写制御領域の下流にレポーター遺伝子をつないだコンストラクトを持つトランスジェニックマウスの作製を行った。加えて、同じcyclin Dグループに属するcyclin D3遺伝子に付いても解析を行うため、イモリのcyclin D3上流配列の単離を行った。その結果、翻訳開始領域より上流数キロをイモリのゲノムよりクローニングすることができた。 本研究の成果を基に学会発表を5件(全て招待演者または指定演者)行った。加えて、高校生を対象としたアウトリーチ活動を2件、市民公開講座を1件行い、研究の成果を広く紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を開始するにあたり、計画全体をより着実に推進する上においては、イモリの心臓再生開始シグナルに応答するcyclin D1の転写制御領域の同定を優先するべきであると判断されたため、本年度はそれに関連する実験を重点的に行った。その結果、これまでに予備的な結果として得られていたcyclin D1上流側の約10 kbの配列のうち、実際の制御機能に重要であることが示唆される領域を絞り込むことができた。 この際、イモリとマウス、それぞれの転写制御候補配列を、イモリ個体とマウス個体双方に導入する実験を進めることができたため、2つの種間におけるcyclin D遺伝子の転写制御機構の比較も同時に進めることができた。その結果、転写制御に関わる重要な領域がどのように保存されているのかに付いても知見を得ることができた。加えて、新たにイモリの心臓再生に対する重要性が示唆されたcyclin D3遺伝子についても、その転写制御機構を解析するために必要なゲノム配列のクローニングを進めた結果、来年度以降に解析する準備ができた。 イモリの心臓再生を開始させるシグナルの同定に向けた解析は、次年度以降に重点的に行うこととなった。しかしながら、計画全体の進捗状況としては、概ね順調に進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、cyclin D遺伝子の転写制御領域の同定と機能解析を優先して行うことで、上述した成果を得た。今年度は引き続き、cyclin D1およびD3遺伝子の転写制御機能の研究を進める。これらの転写制御領域のレポーターとなるコンストラクトを導入したイモリの解析に加えて、昨年度に作製した、イモリあるいはマウスの転写制御配列を導入したトランスジェニックマウスの解析も行う。また、遺伝子の転写制御にはイントロン領域も重要な機能を持つ場合があるため、cyclin D1遺伝子についてもイントロン配列の機能を調べる。この実験に必要な配列は昨年度にクローニング済みである。これらと併せて、cyclin D3遺伝子の上流配列のクローニングを進めて、レポーターイモリを作製することで、D3遺伝子の転写制御配列の同定を目指す。 さらに今年度は、イモリの心臓再生を開始させるシグナルの同定を目指した研究を重点的に行う。シグナルの候補としてはまず分泌製のタンパク質(成長因子)があげられるので、その機能をアッセイする為に、イモリの心臓組織片を培養条件下に移し、それぞれのリコンビナントタンパク質を添加して作用を解析する方針である。この際、開始シグナルがメカニカルストレス等の物理的刺激である場合も考慮しながら実験を行う。これらの実験の結果、シグナルの候補を得られた際は、そのシグナルが実際にイモリの生体内において心臓再生の開始に機能していることを確認するための実験を行う。 このような方針に基づき、今年度の計画全体を推進する方針である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、イモリ心臓の再生開始シグナルの解明に向けた実験に優先して、cyclin D遺伝子の転写制御機構を明らかにする為の実験をを行うこととなった。このため、イモリの遺伝子データベースの解析や遺伝子のクローニング、およびトランスジェニックイモリの作製実験が主となった。その結果、心筋組織の培養に必要な器具や試薬類、および成長因子タンパク質等の購入額が当初の計画より少なくなった。このような理由から、予算をより効率的に使用する為に、次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、イモリ心臓の再生開始シグナルの解明に向けた研究を重点的に行う計画であるため、心筋組織の培養実験を多数行うこととなる。これに必要な器具や試薬類は比較的高価であるため、それらを購入する予算に充当する。加えて、cyclin D遺伝子の転写制御配列を導入したトランスジェニックマウスの解析を推進する計画もある。トランスジェニックマウスの作製と維持のための予算として確保する。このように、次年度使用額についても有効かつ効率的に使用する。
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Research Products
(6 results)