2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08482
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 慶子 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30415252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞分化 / 小胞体ストレス / 筋発生 / 小胞体膜動態 / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
筋前駆細胞である筋芽細胞が筋蛋白質を発現する筋管細胞に分化する筋最終分化過程(以降筋分化と呼ぶ)において、一過的に小胞体ストレス応答が生じ、これが筋分化過程において重要な役割を果たしていることを私たちは以前報告した。更に分化過程に組込まれた生理的小胞体ストレスの発生源が小胞体内カルシウム枯渇であることを突き止め、小胞体内カルシウム枯渇をイメージングによって可視化することにより直接的に証明した。本研究課題では筋分化に伴う生理的な小胞体ストレスの原因である小胞体内カルシウム枯渇がどのように引き起こされるのか、その誘導機構を明らかにすることを目的として、筋分化過程を異なるステップで阻害したサンプルに対する遺伝子発現解析を行い、小胞体内カルシウム枯渇が生じる上流での変化を抽出することに取り組んでいる。研究計画1年目で行った筋分化依存的小胞体ストレスを引き起こす遺伝子発現変化を抽出するためのマイクロアレイの結果を検討するため、小胞体ストレスレポーター筋芽細胞株の作製を試みた。小胞体ストレスに依存して誘導されるCHOP遺伝子のプロモーター下流に蛍光タンパク質GFP(CHOP::GFP)を挿入した配列を筋芽細胞ゲノムに組み込み、分化に影響のない細胞株を選別する予定であったが、他の遺伝子をゲノムに組み込みクローニングにより得た筋芽細胞株の分化誘導実験から、単一細胞由来の樹立筋芽細胞株では、元株と異なる分化状態を示すことが明らかとなった。現在実験に用いているマウス筋芽細胞株C2C12は、すでにヘテロな集団として存在しており、これが分化時においても重要であることが示唆された。小胞体ストレスレポーター筋芽細胞株の作製方法を変更し、トランスポゾンを用いて高効率にゲノム上にCHOP::GFPを組み込み、クローニングを経ずにヘテロな集団のまま培養、維持し、これを今後の解析に用いるための準備に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年6月に出産したため、平成29年5月から10月末まで産前産後休暇及び育児休暇を取得した。また、研究室所属長が平成29年11月付で現所属に異動し、自身も平成30年2月16日付で同所属に異動した。異動に伴う研究室の閉鎖と引越作業のため、育児休暇後の研究の再開は平成30年3月に入ってからとなった。このような理由から、今年度は研究費の使用は全くなく、全額を翌年に繰り越し、「産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う科学研究費助成事業補助事業期間延長」を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きマイクロアレイ解析データの解析を進め、小胞体内カルシウム枯渇を生じさせる特異的な遺伝子発現変化を抽出する。候補遺伝子を検討するための小胞体ストレスレポーター筋芽細胞株の作製を行う。ゲノムへの組み込みにはPiggyBac トランスポゾンシステムを用い、CHOP::GFPを発現するヘテロなC2C12細胞集団を得る。得られたC2C12 (CHOP::GFP)の小胞体ストレス応答及び筋分化過程の確認を行う。この細胞株に対して、候補遺伝子を強制発現させることで小胞体内カルシウムの変化が生じるか当の検討を行う。また、内在性のタンパク質の発現変化の確認及び、ノックダウン時の小胞体内カルシウム枯渇や筋分化への影響の検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
平成29年6月に出産したため、平成29年5月から10月末まで産前産後休暇及び育児休暇を取得した。また、研究室所属長が平成29年11月付で現所属に異動し、自身も平成30年2月16日付で同所属に異動した。異動に伴う研究室の閉鎖と引越作業のため、育児休暇後の研究の再開は平成30年3月に入ってからとなった。このような理由から、今年度は研究費の使用は全くなく、全額を翌年に繰り越し、「産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う科学研究費助成事業補助事業期間延長」を行った。今年度未使用額は中断した研究計画のものであり、計画同様次年度に繰り越す。
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