2017 Fiscal Year Research-status Report
”慢性炎症性疾患”におけるリンパ球K+チャネル(Kv1.3)の、病的・治療的意義
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16K08484
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
風間 逸郎 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (60593978)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リンパ球Kv1.3 / 慢性炎症性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
電位依存性遅延整流型K+チャネルKv1.3は、胸腺由来Tリンパ球の細胞膜上に多く存在し、その活性がリンパ球の増殖や活性化を促す。これまでの研究により、悪性腫瘍や自己免疫疾患では、癌細胞やリンパ球におけるKv1.3の過剰発現が、病気の発症や進展に大きく関与することが分かっているが、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease; CKD)などの慢性疾患におけるKv1.3の病的意義については明らかにされていない。 本研究ではまず、”末期腎不全の腎臓では、リンパ球Kv1.3の過剰発現により、炎症・線維化が進行する”ことを明らかにするために、末期腎不全モデルラットを作成し、腎臓間質におけるKv1.3や細胞増殖マーカーの発現局在を、分子生物学的手法により解析した。Tリンパ球においては、Kv1.3チャネルを介した外向きのカリウムイオンの移動が細胞内へのカルシウムの流入を引き起こし、Calcineurin pathwayが活性化される。その結果、サイトカインの産生や、リンパ球の増殖が促され、細胞性免疫が賦活化される。CKDでは一般に、病期の進行とともに血液中のサイトカイン濃度が上昇することが知られているが、われわれの研究結果からも、”末期腎不全の腎臓では、リンパ球Kv1.3の過剰発現により、炎症・線維化が進行する”ことが明らかになった。 さらに、Kv1.3特異的阻害薬であるMargatoxinや、Kv1.3阻害作用を有する降圧薬であるBenidipineが、リンパ球Kv1.3を阻害することによってリンパ球の増殖を抑え、腎線維化に対する治療効果を発揮することも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行することにより、末期腎不全の腎臓では、リンパ球Kv1.3の過剰発現により、炎症・線維化が進行することを明らかにし、Kv1.3特異的阻害薬や “Kv1.3阻害作用を有する頻用薬”が、実際に腎線維化に対する治療効果を発揮することを明らかにすることができた。具体的には、末期腎不全モデルラットにMargatoxin, Benidipineなどの薬物投与実験を行い、その治療効果を、主に分子生物学的手法を用いて解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、モデルラットに対して薬剤を投与することにより、末期腎不全の進行に対する、他の“Kv1.3阻害作用を有する頻用薬”の治療効果についても、in vivoでの検討を行う。また、いわゆる“慢性炎症性疾患(慢性間質性腎炎や慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患)”についても、疾患モデル動物を作成して同様の解析を行う。そして、これらの病態形成過程にもリンパ球Kv1.3が関与し、Kv1.3阻害薬による治療が有効であることを確かめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した。 当初の計画通り、平成29年度以降継続している、 “慢性炎症性疾患”におけるリンパ球Kv1.3チャネルの関与、およびKv1.3チャネル阻害薬による治療効果を明らかにする研究の遂行のために使用する予定である。
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Research Products
(6 results)