2019 Fiscal Year Research-status Report
”慢性炎症性疾患”におけるリンパ球K+チャネル(Kv1.3)の、病的・治療的意義
Project/Area Number |
16K08484
|
Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
風間 逸郎 宮城大学, 看護学群(部), 教授 (60593978)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | リンパ球Kv1.3 / 慢性炎症性疾患 / 片側尿管結紮モデル / 間質性腎炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
電位依存性遅延整流型K+チャネルKv1.3は、胸腺由来Tリンパ球の細胞膜上に多く存在し、その活性がリンパ球の増殖や活性化を促す。これまでの研究により、悪性腫瘍や自己免疫疾患では、癌細胞やリンパ球におけるKv1.3の過剰発現が、病気の発症や進展に大きく関与することが分かっているが、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease; CKD)などの慢性疾患におけるKv1.3の病的意義については明らかにされていない。本研究では、これまでに行った電気生理学的実験の結果、スタチン系抗コレステロール薬やCa2+拮抗薬(Benidipine)に加え、日常診療で頻用される抗アレルギー薬(AzelastineやTerfenadine)も、リンパ球Kv1.3電流を強力かつ持続的に阻害した。従ってこれらの薬剤も、リンパ球で過剰発現したKv1.3を標的にして、腎臓局所における炎症性細胞の増殖・活性を抑え、それにより、腎線維化の進行を有意に抑制する可能性が示唆された。さらに、片側尿管結紮モデル(Unilateral Ureteral Obstruction: UUO)ラットを用い、その腎臓を解析した結果、腎間質におけるリンパ球Kv1.3チャネルの過剰発現・活性化が、リンパ球の増殖および間質の線維化を促し、病態を進行させることを明らかにした。さらに本研究では、チャネル選択的阻害薬(Margatoxin)を用いた治療的実験により、リンパ球Kv1.3チャネルの不活性化が、腎臓の線維化を有意に抑制することも明らかにしつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行することにより、リンパ球Kv1.3が過剰発現した末期腎不全の腎臓に対し、“Kv1.3阻害作用を有する頻用薬”が、実際に腎線維化に対する治療効果を発揮することを明らかにすることができた。さらに、片側尿管結紮モデル(Unilateral Ureteral Obstruction: UUO)ラットを用い、その腎臓を解析した結果、腎間質におけるリンパ球Kv1.3チャネルの過剰発現・活性化が、リンパ球の増殖および間質の線維化を促し、病態を進行させることを明らかにした。さらに本研究では、チャネル選択的阻害薬(Margatoxin)を用いた治療的実験により、リンパ球Kv1.3チャネルの不活性化が、腎臓の線維化を有意に抑制することも明らかにしつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、いわゆる“慢性炎症性疾患(慢性間質性腎炎や慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患)”についても、疾患モデル動物を作成して同様の解析を行う。そして、これらの病態形成過程にもリンパ球Kv1.3が関与し、Kv1.3阻害薬による治療が有効であることを確かめる。
|
Causes of Carryover |
本年度は、“慢性炎症性疾患”のモデル動物を作成したうえで、その病態形成過程へのリンパ球Kv1.3の関与を確かめる予定であった。これまで、片側尿管結紮術による慢性間質性腎炎や炎症性腸疾患モデル動物の作成に成功してきたが、主たる研究の実施場所を宮城大学に移したことに伴い、環境整備等に時間を要したため、遅延が生じた。次年度使用額は、本年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した。当初の計画通り、平成29年度以降継続している、“慢性炎症性疾患”におけるリンパ球Kv1.3チャネルの関与、およびKv1.3チャネル阻害薬による治療効果を明らかにする研究の遂行のために使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)