2016 Fiscal Year Research-status Report
不均一収縮を呈する心筋においてグルコース値の上昇が不整脈の発生に果たす役割の解明
Project/Area Number |
16K08485
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
進藤 千代彦 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10216228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 昌人 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30302110)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | グルコース / カルシウム波 / 不均一収縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
心疾患を有していない糖尿病患者において、血糖値の上昇は動悸などの自覚症状を引き起こすことはない。そのため、グルコース値の上昇が、正常心筋と不均一収縮を呈するような病的心筋に与える影響の相違点をまず初めに明らかにした。 1)ラット多細胞心室筋(トラベクラ)を摘出し、2秒間隔電気刺激、細胞外カルシウム濃度0.7mMの低カルシウム負荷状態において、グルコース値を150から400mg/dlへと上昇させ、張力・細胞内カルシウムを記録し、グルコース値の上昇が正常心筋に与える影響を検証した。グルコース値の上昇は、電気刺激による発生張力と細胞内カルシウムを変化させなかった。 2)糖尿病患者に認められる病的心筋の実験モデルとして研究代表者らが確立した不均一収縮心筋を用いた。0.4秒間隔電気刺激、細胞外カルシウム濃度2mMの高カルシウム負荷状態において、グルコース値を150から400mg/dlへと上昇させ、細胞内カルシウム動態の変化を記録した。グルコース値の上昇は、カルシウム波伝播速度と後収縮の大きさを増加させた。β刺激薬である200mMイソプロテレノールを加え、高カルシウム負荷状態において不整脈を誘発し、グルコース値の上昇による不整脈の誘発性を記録した。グルコース値の上昇は電気刺激によって誘発される不整脈を増加させた。 以上より、グルコース値の上昇は、細胞内カルシウム負荷のある状態においてのみ、カルシウム波を促進し、催不整脈性を亢進させることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科研費内定の決定が10月と遅く、実験の開始が遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
グルコース値の上昇がカルシウム・カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)をO-結合型グリコシル化し、このグリコシル化によるCaMKIIの活性化が細胞内カルシウム動態の変化を引き起こし、不整脈を発生させる、という仮説が提唱されている。研究代表者らが確立した不均一収縮心筋モデルを用いて、この仮説を検証すると共に、グルコース値上昇による浸透圧変化の関与の有無、活性酸素の関与の有無に関しても検証する。
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Causes of Carryover |
科研費の内定が10月と遅く、研究の開始が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遅れを取り戻すべく精力的に研究を続け、国内と海外の学会で積極的にデータを発表していく予定であり、そのための経費として使用する。
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