2017 Fiscal Year Research-status Report
不均一収縮を呈する心筋においてグルコース値の上昇が不整脈の発生に果たす役割の解明
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16K08485
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
進藤 千代彦 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10216228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 昌人 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30302110)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | グルコース / カルシウム波 / 不整脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレプトゾトシンを腹腔内注射し、8週間後に血糖値が300mg/dlを超えたラットを糖尿病ラット、生理食塩水を腹腔内注射したラットを対照ラットとして実験を行った。ストレプトゾトシンを腹腔内注射したラットの血糖値は平均573mg/dlと上昇していた。 (1)グルコース値上昇による発生張力の変化の検証 糖尿病ラットにおいては対照ラットと比べて、発生張力と最大細胞内カルシウム値が有意に低下した。対照ラットでは、低カルシウム負荷状態においてグルコース150と400mg/dlで発生張力と細胞内カルシウムは変化せず、カルシウム波伝播速度と催不整脈性にも変化を認めなかった。一方、高カルシウム負荷状態においてはグルコース150に比べて400mg/dlでは発生張力が低下したのに対し、細胞内カルシウムは変化しなかった。このことはグルコースの上昇により収縮蛋白のカルシウム感受性が低下したことを示唆した。更に、グルコースの上昇により、カルシウム波伝播速度が亢進し、不整脈が増加した。これに対し、糖尿病ラットでは、低カルシウム負荷と高カルシウム負荷状態のどちらにおいても、グルコース値400mg/dlで収縮蛋白に対するカルシウム感受性は変化せず、カルシウム波伝播速度と催不整脈性にも変化を認めなかった。 (2)不整脈性の発生機序の解明 グルコース値の変化によるCaMKII活性の影響を糖尿病ラットと対照ラットで記録し、催不整脈性への影響を解明した。対照ラットにおいてはグルコース値400mg/dlで不整脈が誘発された。CaMKII阻害薬であるKN93などの投与によって、この催不整脈性の亢進は抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対照ラットと糖尿病ラットにおける多細胞心室筋(トラベクラ)を用いた研究が予定通りに進んでいる。さまざまなグルコース値における発生張力、細胞内カルシウム、膜電位を記録することにより、グルコース値の発生張力、催不整脈性への影響が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)グルコース値上昇による浸透圧変化の役割 グルコース値の上昇は浸透圧の上昇を引き起こす。この浸透圧の上昇が催不整脈性の亢進に関与するかどうかを検証するために、グルコース値150mg/dlにL-グルコース250mg/dlを加え、グルコース400mg/dlと同様の変化を引き起こすかどうかを確認する。また、グルコース値150mg/dlにマニトールを加えて、グルコース値400mg/dlと同じ浸透圧にした際のカルシウム波と不整脈の発生に与える影響を確認する。L-グルコースとマニトールによってグルコース400mg/dlと同様の変化が認められた場合には、CaMKIIの阻害薬などを用いてその機序を解明する。 (2)CaMKII活性の記録 CaMKII活性の測定はSignaTECT CaM KII Assay System(Promega)を用いて行う。低カルシウム負荷状態、高カルシウム負荷状態においてグルコース値を150から400mg/dlへと上昇させたときのCaMKII活性を記録する。更に、L-グルコースやマニトールでグルコース値400mg/dlと同じ浸透圧にした際の活性も記録する。
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Causes of Carryover |
平成29年度に予定していた糖尿病ラットの実験の一部を平成30年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、平成30年度の助成金と合わせて糖尿病ラットの実験に係るラットの購入費として使用する計画である。
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