2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケールカルシウムイメージングによるパーキンソン病発症機序の解明
Project/Area Number |
16K08486
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小山内 実 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (90286419)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大脳基底核 / パーキンソン病 / イメージング / モデル動物 / MRI / 病態生理 / 脳・神経 / 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病は難治性の神経疾患であり、その発症機序の解明は急務である。この疾患は大脳基底核における神経活動の変化によるものと考えられているが、脳のどの部位のどのような活動の変化と病態とが関連しているのかは必ずしも明らかになっていない。そこで、パーキンソン病モデル動物に対して、in vivo および in vitro イメージングによる神経活動のマルチスケール解析に加えて、病態の進行度を行動学的、生化学的に定量化する。このようなマルチスケール・マルチディメンジョンの実験で得られた結果を統合的に解析することにより、病態と領野ごとの神経活動及び神経回路の異常との関係を明らかにすることを目的として研究を行った。 平成 28 年度は複数のパーキンソン病モデル動物に対して、行動実験により病態の定量化を行い、定量的活動依存性マンガン造影 MRI による全脳神経活動計測を行った。 まず、慢性 MPTP 投与によるパーキンソン病モデル動物に対して行動実験により病態の定量化を試みたが、健常動物との差異は見いだせなかった。加えて qAIM-MRI による全脳神経活動計測でも、健常動物との差異はなく、投与法に問題がなかったのか、検討中である。 次に、ドーパミン受容体欠失マウスに対して、行動実験と qAIM-MRI による全脳神経活動計測を行ったところ、健常動物に対して、著しい運動能力の低下が見られ、qAIM-MRI による神経活動計測でも健常動物と神経活動に差がある領域が見出された。現在更なる解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 29 年度の実験計画に挙げた、「パーキンソン病による神経活動変化の qAIM-MRI による検討」については、MnCl2 投与法の検討、MRI 撮影タイミングの検討、撮影パラメーターの検討などを行うことにより、汎用的な脳神経活動計測法としての qAIM-MRI 法を確立した。また、複数のモデル動物に対して qAIM-MRI による全脳神経活動計測を行い、モデル動物ごとの差異を見出しており、研究は順調に進展しているといえる。 「行動学実験、生化学実験による病態の定量化」に関しては、協調運動能力試験を行うためのローターロッドテストだけでなく、ビームウォークテスト、カタレプシーテストなどの行動実験法を確立しつつある。パーキンソン病モデル動物に対しても、行動実験で差異を観測することができており、順調に進展している。 平成 28 年度は慢性 MPTP 投与動物に対する実験を中心に進め、現在も経過観察中であることから、生化学実験を行うことはできなかったが、経過観察終了後に生化学実験も行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 28 年度に行った、パーキンソン病モデル動物に対して qAIM-MRI による全脳神経活動計測、行動実験による病態の定量化を引き続き行う。特に、パーキンソン病モデル動物の作成法について、MPTP 投与量、投与のタイミングなどの検討に加えて、異なる薬剤によるモデル動物作成も視野に入れて更なる検討を行い、モデル動物作成法を確立する。加えて、さらに高空間分解能で神経活動を計測できる MRI 撮像パラメーターを検討する。これらの研究で方法論を確立した後に、行動実験による病態の重篤度と、神経活動の変化とが相関している脳の領域の同定を試みる。これらの研究により、脳のどの領域がパーキンソン病の病態と関係しているのかを明らかにする。 さらに、パーキンソン病モデル動物で神経活動が変化していた脳の領域や、関連する領域の急性スライス標本を用い、多細胞 Ca2+ イメージングを行い、多ニューロンの自発活動の計測を行う。この結果を健常動物と比較することにより、神経活動がパーキンソン病によりどのように変化するのかを明らかにする。また、活動の同期解析などを行うことにより、機能的ネットワーク構造を同定する。この機能的ネットワーク構造がパーキンソン病によりどう変化するのかを明らかにする。さらに、ドーパミンシグナル伝達系を主なターゲットとし、薬理学実験を行うことにより、健常動物において、パーキンソン病と同等のネットワーク活動変化をもたらす分子機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
実験に使用する試薬類の購入費用が見積もりよりも安価に済んだため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成 28 年度の余剰分は、研究成果を広く発信する目的で、学会発表等の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(16 results)