2016 Fiscal Year Research-status Report
嗅覚神経細胞における感度モジュレーションの分子メカニズム解明
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16K08495
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹内 裕子 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (10324823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パッチクランプ法 / 感覚神経細胞 / イオンチャネル / ケージド化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、嗅細胞をモデルとし、細胞内外における分子による細胞興奮・抑制への影響を定量的に調べることを目的としている。特に、嗅覚受容において、嗅細胞に発現している情報変換チャネルは匂いの感度を調節する役割を果たす。嗅覚情報変換チャネルは視覚の視細胞や聴覚の有毛細胞となどの感覚細胞とは異なり、2種類のイオンチャネルが連動して働くことで化学情報-生体電気信号変換の感度に影響を与える。そこで、実際に生きた嗅細胞からイオンチャネルの活性をパッチクランプ法を用いることで、リアルタイムに、定量的に調べることを可能とした。一方で、嗅覚情報変換チャネルは嗅細胞の中でも、外界と接している線毛部分に局所的に発現している。しかし、この線毛は直径100nm程度であり、可視光線よりも小さな構造体であることからも、実験試料としての取り扱いは非常に困難である。本研究では、生きた嗅細胞の線毛に発現しているイオンチャネルの動向をリアルタイムで調査するため、LSMと蛍光物質による線毛の可視化、ケージド化合物使用による線毛内の分子コントロール、定量的な薬物投与を組み合わせて行った。薬物には各種匂い物質、匂いを持たない化学物質等、化学的特徴の異なる物質を用い、嗅細胞の興奮・抑制を電流変化で計測した。初年度はシステムの構築と改変を中心的に行った。更にセットアップの改良が必要であることからも、実験目的に即したセットを構築する部品を自分で作成することが必要である。その理由として、市販のセット・機器では本研究には対応できないからである。また、研究を進めていく中で、強い抑制を引き起こす物質には共通する化学的特長が見られたが、他の可能性も示唆されている。次年度以降は、セットアップの更なる改良と広い可能性を検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、実験の目的に即した実験セット改良と構築を進めることができた。本研究では試料の取り扱いの困難さや高い実験技術が求められることからも、データ取得率をあげるためにはセットアップの細部に至るまで注意を払うことが必要である。細胞試料である線毛の細部まで観察するために、TIRFシステムを導入した。このシステムを用いることでより鮮明に線毛が観察でき、電気生理への併用も可能となる。数百ナノメートル範囲での局所的な部位に入った線毛の分子挙動を可視化するために、488nmアルゴンレーザーと対物レンズには高倍率(x100)・高NA(1.7)を持つレンズを設置した。セットアップの動作確認が済み、次年度は細胞への適用を進める。また、電気生理のセットアップも同じシステムに組み込むことを考慮し、ノイズ・ハム対策を厳密に進める予定である。しかし、初年度半ばにキャンパス移動を命じられたため、構築した新セットアップも年度末には全て解体せざるを得ない状況と変化した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、初年度に作製した機器を用いて細胞からの記録・データを取得することを目標とする。しかし、既にの述べたように、研究室のキャンパス移転を余儀なくされたため、初年度に作製したセットアップが年度末には全て解体された。それゆえに、次年度は、まず新しい研究場所で更にバージョンアップしたシステムの再構築をめざす。初年度に行ったTIRFセットの設定のみならず、電気生理記録装置との組みあわせ、更には薬物投与システムも作製して組み合わせ、を1つのシステムとして効率的に動作するよう、セットを組み立てる。パッチクランプ記録ではノイズレベルを落とすことが必要不可欠であることからも、実験環境の整備を行ったうえで、セットアップを完成させ、細胞からのデータを取得する。その後は、実際のデータから推測できる細胞興奮と抑制の分子メカニズムを検証する。
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Causes of Carryover |
研究の内容からもシステム構築がメインであったことからも、理論的な部分での進捗・進展が中心となったため、器具などを買い足す物品が少なかったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、キャンパス移転もあり、本研究での実験セットが全て解体されている状況であることからも、1から組みなおす必要が生じているので、初年度以上に物品購入などを行うことが予想される。
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Research Products
(7 results)