2016 Fiscal Year Research-status Report
ノックインマウスを用いたヒト遺伝性心筋症の病態形成メカニズム解明と治療薬の検討
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16K08514
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
杜 成坤 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (90590646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 幸生 九州大学, 医学研究院, 准教授 (50202362)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肥大型心筋症 / 拡張型心筋症 / ノックインマウス / 発症 / 突然死 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋症では、心筋トロポニンT(cTnT)などのサルコメア蛋白質において、様々な遺伝子変異が原因として同定されている。しかしながら、ヒト心筋症患者で生じている変異をそのまま再現したノックイン(KI)マウスがなかったため、有効な治療法の開発は大変遅れている。研究代表者らは、マウスの内在性cTnT の特定部位にヒト拡張型心筋症(DCM)を発症させる変異ΔK210、および肥大型心筋症(HCM)を発症させる変異S179Fを、導入した二つのKI モデルを作製した。本研究では、これらのモデルを用いて、心筋症の特徴的な病態形成メカニズムを解明し、突然死の早期予防法を含め有効な治療法・治療薬の開発を目指すことを目的とする。 平成28年度において、1.S179F HCM ノックインマウスに対し、電気刺激を行った単離心筋細胞のCa2+トランジェト及びサルコメア長の変化を測定したところ、HCMホモマウスではCa2+トランジェトピークの低下、及びCa2+トランジェトの減衰時にextra Ca2+が見られた。このことは、ミオフィラメントのCa2+感受性の増加によって、トロポニンCからのCa2+イオンの解離速度が低下していることが示唆された。 2.また、1ヶ月齢のΔK210 DCM KIマウスに対し、治療候補であるコリンエステラーゼ阻害剤による治療効果を検討したところ、ドネペジルの投与がこのDCMマウスの生命予後及び心臓リモデリングへの改善効果が認められた。3.更に、ヒト患者で見られる病態がこの二種類のKIマウスに現れる時期及びその後のプロセスを調べるために、胎児期から心エコーで評価をおこなっているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度において、HCM KIマウスに対して、単離心筋細胞実験は計画とおりに実施できた。また、DCM KIマウスに対して、新たな治療法・治療薬の探索を行ったところ、有効性の高いものを見つけた。これらの状況を踏まえ、本研究は研究計画通りほぼ順調に進んでいると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、HCMとDCM KI マウスに対し、胎児期から経時的な解析を行い、データを重ねていく。また、研究計画に従い、心肥大・心不全には重要なシグナリング経路を分子レベル解析で調べる予定である。
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Causes of Carryover |
タンパク質濃度測定装置は今年度購入する予定であるが、共通機器でいけたので、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請書に記載した通り、次年度は主として分子レベル解析の薬品購入などの消耗品費及び研究成果を国際・国内学会で発表するための旅費として研究費を使用する予定である。また繰越分は、病理組織標本作製の受託費、及び分子レベル解析の試薬に使用する予定である。
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