2016 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集によるエストロジェン膜受容体欠失ラット作製と細胞増殖抑制機構の解明
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16K08522
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
三井 哲雄 山梨大学, 総合研究部, 助教 (20402084)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エストロジェン / 膜受容体 / Gpr30 / 細胞増殖 / 下垂体 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
エストロジェン(E2)は乳腺、子宮、下垂体前葉といった標的器官に作用して細胞増殖を促進することにより、これらの組織の正常な成長、発達を調節しているが、一方で、これらの組織における腫瘍の発症病理にも関与している。我々は、下垂体前葉のプロラクチン産生(PRL)細胞の増殖に対するE2の作用について調べた結果、insulin-like growth factor-1(IGF-1)等の成長因子の存在下では、E2が細胞増殖を逆に抑制するという興味深い現象を見出した。E2の作用は核内受容体に結合することによるgenomicな機構を介して発現すると従来から考えられているが、最近E2の膜受容体(Gpr30)を介した早いシグナル伝達がE2の作用発現の一端を担っていることが示唆されている。 そこで本研究では、E2の増殖抑制が核内受容体を介するものなのか、あるいは膜受容体を介する作用なのかを調べた。その結果、E2の核内受容体には作用せず膜受容体にのみ作用するBSA-conjugated E2は、IGF-1によるPRL細胞の増殖促進作用に影響を及ぼさなかった。一方、核内受容体に作用するdiethylstilbestrol(DES)は、IGF-1による増殖促進作用を抑制し、さらにE2依存性遺伝子発現をE2と同様に変化させた。また、E2の膜受容体の一つであるGpr30の特異的アゴニストとして知られるG1はIGF-1によるPRL細胞の増殖促進作用を、E2と同様に用量依存性に抑制したが、E2依存性遺伝子発現には影響しなかった。 以上の結果より、E2によるPRL細胞の増殖抑制には膜受容体を介した経路は重要ではない可能性も考えられるが、膜受容体を介した経路の活性化により、PRL細胞の増殖が抑制されたことから、Gpr30欠失ラットを作製し、さらに解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Gpr30の特異的作動薬(G1)により、膜受容体を介した経路が、IGF-1による増殖促進作用を抑制する可能性が示唆されたが、本研究の本題であるゲノム編集による遺伝子改変ラットの作製がまだ行えていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集ツールの検討をさらに進め、エストロジェンの膜受容体Gpr30欠失ラットを作製する。次に、Gpr30欠失ラットにおけるエストロジェン作用に関する表現型の変化を網羅的に調べるとともに、PRL初代培養細胞を用いてエストロジェンの増殖促進および抑制作用の変化を調べる。先行研究によりすでに同定しているエストロジェン応答性遺伝子の発現変化を、Real-time PCR法を用いて調べる。さらに、トランスフェクション法によりGpr30をレスキュー発現させ、増殖あるいはエストロジェン応答性遺伝子の発現変化を調べる。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変ラットの作製まで至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主には遺伝子改変ラットの作製費用に使用する。その他、プラスミドの購入やRNA抽出試薬など、消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)