2017 Fiscal Year Research-status Report
ストレスによる生殖機能低下をおこすGnRHニューロンへのGABA入力の可塑的変化
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16K08523
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
渡部 美穂 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10399321)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生殖 / GnRHニューロン / GABA / KCC2 / ストレス / 神経内分泌 / NKCC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではストレスが性周期を制御するGnRHニューロンの機能低下を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目的に解析を進めている。抑制性伝達物質であるGABAがGnRHニューロンでは興奮性に作用することを明らかにしているが、ストレスによりGnRHニューロンの細胞内クロライド濃度維持機構が破綻し、GABA作用が興奮性から抑制性に変化することで生殖機能の低下を引き起こす可能性について検討を行った。GnRHニューロンの株細胞にK+-Cl-共役担体(KCC2)を発現させることによりGABA作用を抑制性に変化させ、活動性の変化を調べたところ、株細胞が示すカルシウムオシレーションがみられなくなった。次に、カルシウム蛍光指示薬を用いて急性スライス標本のGnRHニューロンからのカルシウム変化の記録を試みたが、指示薬が細胞に取り込まれず記録を行うことが出来なかったため、独自に作成したGnRHニューロンでテトラサイクリン制御性トランス活性化因子(tTA)を発現するマウス(GnRH-tTA マウス)と慶應大学田中先生より供与いただいたtetO-GCaMP6マウスを交配させ、GnRH-tTA::tetO-GCaMP6マウスを作出した。このマウスではGnRHニューロンでカルシウムセンサーであるGCaMP6を発現させることができ、GnRHニューロンのカルシウム変化を記録することが可能になった。ストレス負荷によるGABA応答の変化を阻害することで、生殖機能の低下を阻止できるか検討するために、GnRH-tTAマウスとGABAの興奮性を維持するNa+-K+-2Cl-共役担体(NKCC1)の翻訳開始部位直前にtetO 配列をノックインしたマウスを交配させ、GnRH-tTA::NKCC1-tetO マウスを作出した。このマウスではGnRH ニューロンでNKCC1の発現誘導を特定の時期に可逆的に行うことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はストレス負荷によるGnRHニューロンの活動性の変化の指標としてGnRHニューロンが示すカルシウムオシレーションの変化を記録するために、GnRHニューロンでカルシウムセンサーであるGCaMP6を発現するマウスを作出することができた。このマウスを使用することで、GnRHニューロンのカルシウム変化を測定することが可能になり、このマウスから急性脳スライス標本を作製し、カルシウムオシレーションの記録をはじめたところである。また、ドキシサイクリン依存性にGnRHニューロンで特定の時期にNKCC1を発現させることができる遺伝子改変マウスを作出することができ、このマウスではGnRHニューロンへのGABA作用を興奮性に維持できるため、ストレス負荷によるGnRHニューロンでのGABA作用の興奮性から抑制性への変化を阻止することができ、このマウスを用いて解析を行うことにより、ストレスによる生殖機能の低下とGnRHニューロンでの細胞内クロライド濃度維持機構の破綻との関連を明らかにすることが出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度作成したGnRHニューロンでGCaMP6を発現しているマウスを用いて、拘束ストレスおよび低栄養ストレス負荷により、GnRHニューロンが示すカルシウムオシレーションに変化がみられるか調べ、ストレスによるGnRHニューロンの活動性の変化を検討する。変化がみられた場合、GnRHニューロンでGABAの興奮/抑制を維持するトランスポーターであるNKCC1/KCC2を発現させ、ストレスによるGnRHニューロンの活動性の変化を阻止できるか検討する。また、本年度作成したGnRH-tTA::NKCC1-tetOマウスに拘束ストレスおよび低栄養ストレスを負荷し、膣スメアを採取することにより性周期の変化を調べ、GABAの興奮性作用を維持することによりストレスによる生殖機能の低下を阻止することができるか検討する。ストレス負荷によるGABA応答の変化を引き起こす因子として、HPA軸の活性化が関与しているか調べるために、合成グルココルチコイドのデキサメタゾンを皮下注射し、ストレス負荷時と同様のGABA応答の変化がみられるか検討する。
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Causes of Carryover |
実験に使用した遺伝子改変マウスの繁殖状況が悪く、予定より飼育マウス数が少なかったため、飼料代、ジェノタイピング試薬代の一部が次年度使用になった。 次年度のマウス飼料代、ジェノタイピング試薬代に使用予定である。
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[Journal Article] Time-controllable Nkcc1 knockdown replicates reversible hearing loss in postnatal mice.2017
Author(s)
Watabe T, Xu M, Watanabe M, Nabekura J, Higuchi T, Hori K, Sato MP, Nin F, Hibino H, Ogawa K, Masuda M, Tanaka KF
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Journal Title
Science Reports
Volume: 7
Pages: 13605-14007
DOI
Peer Reviewed
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