2017 Fiscal Year Research-status Report
配偶子受精能の相互補完的な共役機構とその制御メカニズムの解析
Project/Area Number |
16K08530
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
三輪 尚史 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (40255427)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 受精 / 卵保護膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度において、ダイカルシンによる卵周囲構造制御メカニズムを解析することを目的とし、下記の成果を得た。 1.前年度におけるツメガエル卵保護膜フィラメントの電子顕微鏡解析において、ダイカルシン由来合成ペプチド(受精阻害作用を有する)を未受精卵に反応させると、卵保護膜フィラメントが卵形質膜に平行な位置に配向する傾向が認められた。また、gp41由来合成ペプチド(受精促進作用を有する)では、ランダムな配向をとる傾向が認められた。そこで、この顕著な構造変化を定量的に解析するために、本年度は、交叉形状(5種類)の分布頻度およびフィラメント交叉角を定量解析した。その結果、gp41由来ペプチドの作用により、交叉形状および交叉角の分布いずれも最頻値は低下し、データの散らばりは大きくなり、高受精能状態でのランダムな配向性を裏打ちする定量的結果を得た。 2.ダイカルシンの受精成立に及ぼす生理機能を解析するために、マウスダイカルシン遺伝子欠損マウスの妊孕性を解析したところ、雌ノックアウトマウスからの胎仔数がコントロールよりも多いことが分かった。自然受精での受精率増強の例はこれまでのところ知られておらず、非常に有意義な結果である。 3.マウスダイカルシンの作用メカニズムを解析するために、ダイカルシンの標的分子を解析した。そのためのプローブとして用いるために、ダイカルシン作用の責任ペプチド領域を同定した。つぎに、卵丘細胞を調製し二次元電気泳動後、標識したペプチドと反応させた。その結果、複数種の蛋白質が作用領域ペプチドと結合することが明らかになり、一部の蛋白質を同定した。 4.1.マウスダイカルシンによる卵周囲構造への影響を解析するために、ダイカルシン欠損マウスの卵丘細胞膜周囲の超微細構造について電子顕微鏡解析したところ、細胞膜上の微細突起が欠失することを示唆する結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成29年度計画は、1.マウスダイカルシン遺伝子欠損マウスの妊孕性解析、2.ダイカルシンの標的蛋白質の同定、3.ダイカルシンの卵丘細胞膜への作用機構である。1. について、妊孕性が増強することが明らかとなった。また、2.については、標的物質候補を複数分離できており、3.についてもすでに卵丘細胞膜において微細構造上の変化を見出している。さらに、ツメガエル卵保護膜の超微細構造の定量的解析を実施し、前年度成果を補完する結果を得ている。以上より、研究の進展はおおむね順調と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に引き続き、ダイカルシンの受精阻害作用の詳細を解明する。そのために、1.卵丘細胞間質および透明帯フィラメントの超微細構造解析、2.ダイカルシン標的分子について、卵丘細胞上の局在および細胞内情報伝達系への影響について解析する。また、ダイカルシンによる卵周囲構造制御が精子先体反応に及ぼす影響を解析するために、3.ダイカルシン過剰存在下および欠損マウスの未受精卵・卵丘細胞塊を精子が通過する際の先体反応特性(先体反応発生率)を解析する。
|
Causes of Carryover |
当初購入を予定していた実験用試薬について、一時的に在庫がなくなり、購入計画を次年度に延期したため。本年度については、当初の計画通りの購入を予定している。
|