2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒト培養細胞株を用いた簡便な腎毒性の検出;IL-6/IL-8レポーターの応用
Project/Area Number |
16K08548
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
古倉 健嗣 鳥取大学, 医学部, 助教 (30344039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大林 徹也 鳥取大学, 生命機能研究支援センター, 准教授 (80348804)
井上 敏昭 鳥取大学, 医学部, 准教授 (80305573)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 腎毒性 / IL-6遺伝子レポーター / IL-8遺伝子レポーター / 人工染色体ベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
腎臓は血液から老廃物を濾過後、水分や栄養分を再吸収する機能をもつため、毒性物質の暴露を受けて傷害されやすい。医薬品などの開発における腎毒性試験には、主にラットなどの実験動物が用いられてきた。しかし、実験動物で多くの化合物の腎毒性を明らかすることは費用や時間がかかるうえ、腎毒性試験を通過した医薬品候補化合物の多くが臨床試験での腎傷害により開発断念されているなどの問題がある。そのため医薬品の開発初期段階でも利用しうる、簡便な培養細胞による腎毒性試験法の併用が期待されている。これに対する現在の課題は、ある程度腎臓細胞としての形質を保持するヒト細胞株の選定や、生理的な腎傷害様反応に基づく腎毒性物質の検出などが挙げられる。これまでに、腎臓由来初代培養細胞では腎毒性物質に反応してIL-6/8(炎症性サイトカイン・ケモカイン)mRNAの発現量が上昇することが報告されている。 本研究では、ヒトにおける腎毒性を簡便にかつ定量的に検出するため、IL-6/IL-8遺伝子レポーターを導入したヒト腎臓培養細胞株を用いたスクリーニング系を確立する。このため、(1) IL-6 + IL-8遺伝子レポーターの作製、(2a) ヒト腎臓由来培養細胞の選定及びアッセイ条件の確認、(2b) ヒト腎臓由来細胞株にレポーター遺伝子を導入(レポーターを含む安定細胞株の樹立)、(3) レポーター遺伝子が実際に様々な腎毒性物質に応答するかを確認する。 昨年度はRT-qPCRによって本研究に適した細胞株をに目処をつけた。そこで今年度は主にレポーター遺伝子の構築を行った。その後、当該細胞株に一過性にトランスフェクションし、腎毒性物質として知られるピューロマイシン処理などによって正常に動作しうるかを確認した。その結果、レポーター遺伝子は概ね、期待通りの応答をすることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は平成28年度10月に追加採択となったのち、アッセイに適用しうる細胞株の選定をRT-PCRを指標によって行った。平成29年度では、主にIL-6及びIL-8遺伝子レポーターの構築を行なった。IL-6とIL-8の転写調節領域は、ヒトゲノム断片を含むBACよりPCRにて増幅し、SLG(緑色発光ルシフェラーゼ)を含むベクターにクローニングした。クローニングされた配列を確認後、CAG-SLR(赤色発光ルシフェラーゼ)コンストラクトと共に一過性にトランスフェクションし、ピューロマイシン処理を行った。その後、ルシフェラーゼアッセイを行い、SLGとSLRシグナルの比率を指標に、IL-6とIL-8レポーターが期待通りに動作することを確認した。ただし、ピューロマイシンは真核生物でのリボソーム阻害剤であり、タンパク質合成も阻害される。その結果、SLGとSLRの発光量自体は優位に減少していた。今後、タンパク質合成阻害作用を含まない他の腎毒性物質でもレポーターが期待通りに動作するかを確認する必要がある。 また当初の計画では、基質は同じルシフェリンであるが発光波長が異なるSLG(緑色ルシフェラーゼ)とSLR(赤色ルシフェラーゼ)の組み合わせを用いる予定をしていたが、波長の区別のための特殊なルミノメーターが必要になる。そこで、より一般的な(汎用性の高い)デュアル ルシフェラーゼアッセイを利用することにした。このため、まずは使用する基質が異なるNano Luc(プロメガ社)とELuc(Toyobo)の組み合わせを試したが、両ルシフェラーゼが干渉し、うまく測定できなかった。現在、Nano Lucとホタルルシフェラーゼ(プロメガ社)の組み合わせをDual Luciferase Reporter assay kitで試しており、確認後、この組み合わせに移行したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、(1) NanoLucとホタルルシフェラーゼの組み合わせでデュアル ルシフェラーゼアッセイができることを確認する。 (2) レポーター遺伝子を一過性のトランスフェクションしたのち、いくつかの腎毒性物質(以前に腎臓由来初代培養細胞で使われていた論文に記載されているもの)を添加し、レポーターが期待通りに動作することを確認し、(3) レポーター遺伝子を安定的に保持する細胞株を樹立したい。そして、 (4) 様々な腎毒性物質で、どのようにレポーター遺伝子が反応するかをRT-qPCRと比較して行きたい。本研究課題は平成30年度が最終年度となるが、遅れを取り戻せるようにして行きたい。
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Causes of Carryover |
若干の次年度使用額の増加があるが、研究の進行を加速させるのに伴い、差額は解消されると思われる。
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Research Products
(2 results)