2017 Fiscal Year Research-status Report
組織線維化に関与する新たな酸化シグナリングの解明と治療戦略への応用
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16K08552
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
勝山 真人 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60315934)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | NADPHオキシダーゼ / 組織線維化 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織線維化は不可逆的な変化であり、根治可能な薬物療法は現在のところ存在しない。NOX4は活性酸素種(ROS)を産生するNADPHオキシダーゼの触媒サブユニットの一分子種であり、NOX4が産生するROSは組織線維化に重要な役割を果たすが、その分子機構は未解明の点が多い。 申請者はNOX4のノックダウンにより、コラーゲンとエラスチンのクロスリンクに関与するリジルオキシダーゼ(LOX)がmRNAレベルで減少することを見出した。しかし用いたsiRNAと一部が完全に相補的な配列だったことから、一連の現象がオフターゲット効果によるものであることが判明した。そこでNOX4に対する別のsiRNAを用いた網羅的解析を行い、複数のsiRNAで再現性が得られる蛋白を新たに探索した。 候補として同定した4種類の蛋白A~Dについて、定量PCR法によりmRNA量の変化を確認したところ、いずれもNOX4に対するRNA干渉の影響は認められなかった。またウエスタンブロット法では、蛋白A(コラーゲンのクロスリンクに関わるとされる酵素)は抗体の問題から検出が困難であった。蛋白B(TGF-βのシグナリングに関与する膜タンパク)はNOX4に対するRNA干渉で蛋白量自体が減少した。他の2種類については発現量の変化は認められなかったが、NOX4の発現抑制による酸化修飾の変化は再現できなかった。 NOX4に対するRNA干渉で起こる蛋白Bの減少は、MG132では抑制されず、バフィロマイシンA1で抑制されたことから、ユビキチン-プロテアソーム系ではなくリソソームによる分解を介するものであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NOX4/NADPHオキシダーゼ由来活性酸素種が直接酸化修飾する標的蛋白が同定できなかったため、周辺のシグナル伝達を解析することしかできていない。 また申請者は所属機関の放射性同位元素研究施設の管理責任者であるが、その縮小計画が持ち上がったため、関連業務に費やす時間が大幅に増えたことが一因であることは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は申請者の所属機関の放射性同位元素研究施設の縮小工事を行うため、管理区域内で主に研究を行っている申請者にとっては研究に支障が出ることが予想される。他の共通実験施設を活用するなど、まずは研究環境の維持に努めたい。 NOX4に対するRNA干渉で蛋白量自体が減少した蛋白Bは、TGF-βのシグナリングに関与する膜タンパクであった。NOX4のシグナリングが蛋白Bの膜表面での機能的発現を維持し、TGF-βのシグナリングを増強していることが予想される。そこで蛋白Bの膜表面からの内在化に関与するとの報告があるリン酸化酵素について、NOX4のシグナリングとの連関を検討する。 一方申請者は、NOX4 mRNAよりわずか4塩基だけ欠失したスプライスバリアント・NOX4A mRNAが肺由来線維芽細胞に発現し、NOX4よりもN末端の短いNOX4Aが細胞内でROSを産生する可能性を見出した。想定蛋白のC末端にMycタグを連結して培養細胞に発現させ、Mycタグに対するウエスタンブロットを行ったが、蛋白は検出されなかった。そこでHiBiTタグを用いた発光検出により、NOX4A mRNAが蛋白をコードしないlong non-coding RNAとして機能するのか、あるいはNOX4のN末端のみの短い蛋白をコードするのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
計画通りに研究が進まなかったことが一因である。 今年度の消耗品の購入に充てる。
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