2016 Fiscal Year Research-status Report
血中短鎖脂肪酸濃度を決定付ける肝短鎖脂肪酸取込み調節機構の解明
Project/Area Number |
16K08555
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
福冨 俊之 杏林大学, 医学部, 助教 (30439187)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 徹 杏林大学, 医学部, 助教 (30433725)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 短鎖脂肪酸 / 酪酸 / プロピオン酸 / トランスポーター / 輸送体 / PDZ / プロテオミクス / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、血中短鎖脂肪酸濃度を決定付ける肝臓における短鎖脂肪酸の取込み調節機構の解明を目指し、酪酸輸送体OAT7およびプロピオン酸輸送体OAT2の機能調節機構を明らかにすることである。そのため、当該年度は、OAT7調節タンパク質候補の1つであるPDZK1に着目し、PDZK1によるOAT7の酪酸輸送調節の解明とPDZK1以外のOAT7相互作用タンパク質の探索を目的として、研究を行った。 PDZK1によるOAT7の酪酸輸送調節の可能性を検討するため、PDZK1とOAT7の相互作用を免疫沈降法により確認した。その結果、PDZK1とOAT7を強制的に発現した細胞およびPDZK1とOAT7を内在的に発現する細胞のいずれの細胞においても、PDZK1とOAT7の共免疫沈降を検出し、PDZK1とOAT7の相互作用を明らかにした。 また、PDZK1以外のOAT7相互作用タンパク質を明らかにするため、プロテオミクス解析を用いた手法により探索を行った。 PDZK1およびOAT7を内在的に発現するヒト肝臓由来細胞を用いて、免疫沈降法によりPDZK1-OAT7複合体群を回収し、その回収物を溶液中で酵素消化し、質量分析計によって複合体を形成しているタンパク質を同定した。同時に、回収物を電気泳動により分離し、分離後のタンパク質をタンパク質分解酵素によるゲル内消化し、質量分析計により同定を行った。その結果、複数のタンパク質を同定し、新たなOAT7相互作用タンパク質候補を見出した。 以上より、当該年度においては、PDZK1およびOAT7を発現する細胞におけるPDZK1とOAT7の相互作用を明らかにした。加えて、新たなOAT7相互作用タンパク質を明らかにし、OAT7の機能調節タンパク質候補を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗状況は、現在までに、研究計画調書に則って概ね進捗しているが、抗体を用いたOAT7検出とPDZK1遺伝子のノックダウンの条件検討において、やや遅れが生じている。 OAT7とPDZK1の相互作用検出は、免疫沈降法を行った後に、ウエスタンブロッティング法により、OAT7およびPDZK1のそれぞれの抗体により検出する。しかしながら、OAT7の抗体においては、複数のバンドが検出されてしまい、抗体のOAT7に対する特異性が不明となる状況に陥った。本問題点を解決するため、質量分析計を用いた検討とflagタグを付加したOAT7を用いた検討を行った。質量分析計を用いた検討は、OAT7を強制発現させた細胞を用いて、含まれるタンパク質を電気泳動により分離し、各バンドを切り出し、ゲル内消化後、各バンドに含まれるタンパク質を質量分析計を用いて同定した。flagタグを付加したOAT7を用いた検討は、OAT7にflagタグを付加するコンストラクトを作成し、そのコンストラクトを用いて細胞中に発現させて、flag抗体およびOAT7抗体を用いたウエスタンブロッティング法により検出し、OAT7の検出バンドを検討した。 PDZK1によるOAT7の機能調節の解明のため、PDZK1を内在的に発現する細胞のPDZK1遺伝子ノックダウンによるOAT7の輸送機能への影響を検討することを計画している。PDZK1遺伝子のノックダウンには、siRNAを用いて行い、高いノックダウン効率を得ることができた。しかしながら、siRNAに適した細胞confluencyでは、輸送機能解析実験においては、細胞の剥離等で不適当となった。そのため、shRNAのベクター作成、ノックダウンの条件検討を新たに実施している。 以上より、研究遂行を妨げる問題点を改善する為、研究進捗にやや遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書に則て、今後も研究を推進していく。しかし、上述したように現段階においては、若干の遅れが生じている。この遅れを克服すべく、速やかに研究分担者、連携研究者および研究協力者と打ち合わせを行い、連携研究者および研究協力者の協力を仰ぐ。 本研究計画において、PDZK1によるOAT7の機能調節の解明のため、PDZK1を内在的に発現する細胞のPDZK1遺伝子のノックダウンによるOAT7の輸送機能への影響を検討することを計画している。siRNAを用いて、PDZK1遺伝子をノックダウンする予定であり、既に、条件検討により、siRNAを用いた高いノックダウン効率を得ることができた。しかしながら、siRNAに適した細胞confluencyでは、輸送機能解析実験においては、その条件下での細胞の不安定性や細胞剥離等で不適当となる問題が生じた。その対応策として、shRNAを用いたPDZK1遺伝子のノックダウンを行う。現在、shRNAのベクター作成、ノックダウンの条件検討を新たに実施している。
|
Causes of Carryover |
前述のように、抗体の特異性に関する問題およびsiRNAを用いた遺伝子ノックダウンよる問題が生じた。その為、その問題に対する対策を講じたことによって、研究進捗にやや遅れが生じた。そのため、当該年度に実施予定の実験項目が、当該年度に実施不可能になってしまったため、実施予定実験に使用する消耗品および物品費等の購入を見送った。以上の理由より、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に実施を予定していた実験項目を次年度に実施予定である。よって、次年度に当該年度実施予定実験に必要不可欠な消耗品および物品費等を購入し、次年度使用額を使用する。
|