2016 Fiscal Year Research-status Report
血管周囲脂肪組織の機能障害はメタボリックシンドロームを増悪する
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16K08563
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
籠田 智美 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (00291807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | metabolic syndrome / perivascular / adipose tissue / vasodilation / adipokine |
Outline of Annual Research Achievements |
メタボリックシンドローム(MetS)は、内臓脂肪型肥満を基盤とした血管病や糖尿病の発症リスクの高い疾患であり、その予防・治療法に様々なアプローチが求められている。我々は、MetSモデル動物であるSHRSP.ZFラットを用いて、動脈周囲脂肪組織(PVAT)は、MetSの早期では動脈拡張機能低下を補足し血管緊張性維持に寄与するが、MetSの慢性期・後期ではそのバックアップ機能が破綻することを見いだした。このことから、PVAT機能の破綻は動脈拡張障害を露呈することとなり、組織への循環障害が誘起されると推測した。本研究は、PVATの機能破綻はMetSに見られる虚血性疾患の高い発症率に繋がることを立証することを目的として計画した。初年度は「PVATによる動脈拡張作用のメカニズム」を明らかにすることを目的として検討し、以下の結果を得た。 1. PVATは拡散性の因子を産生・放出している:SHRSP.ZFラットの腸間膜動脈のPVATを摘出動脈標本にできるだけ密接させたBio-assay標本を作成し、PVATの効果が再現できるかを検討した。その結果、20週齢SHRSP.ZFラットから摘出したPVATでは、その効果が再現できた。 2. メタボリックシンドロームの時期によってPVAT由来因子の産生が変化する:Bio-assay標本を用いた検討から、30週齢のSHRSP.ZFと正常対象WKYから摘出したPVATでは、血管拡張亢進効果は再現できなかった。 3. PVATはNO-cGMP系を介して血管を拡張させる:内皮細胞除去及びNO合成酵素阻害薬の処置により、PVATの効果が消失した。 上記の結果から、PVATは液性因子を産生して血管内皮細胞のNO産生を亢進すること、また、MetS慢性期・後期にはPVAT由来因子の産生が低下することが示唆された。得られた成果を論文としてまとめ、投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に初年度計画とした実験はほぼ全てを完了し、得られた結果をまとめて学術論文を作成し、投稿、受理された。しかし初年度の最後の実験計画であった「高レプチン血症であることに意味があるのか」については、本年度は他の病態モデル動物を購入し、目的とする週齢に達するまで当該飼育機関で飼育をしている段階である。PVAT機能確認の実験については、来年度早々に実施する。また、PVAT由来の拡散因子の探索についても、数種のアディポカインについては遂行済みである。今後、継続実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、始めに、H28年度実施予定であった研究「高レプチン血症であることに意味があるのか(他の病態モデルを用いての比較実験)」及び「PVAT由来の血管拡張因子は何か(探索実験)」を行い、次いで、H29年度計画の研究を進める予定である。
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Research Products
(3 results)