2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘム-Bach2経路による遺伝子発現制御とその意義の解明
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16K08573
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 美紀 東北大学, 医学系研究科, JSPS特別研究員(RPD) (00455784)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘム |
Outline of Annual Research Achievements |
転写抑制因子Bach2 の発現は免疫系細胞で高く、B 細胞の分化に必須な因子であることが知られてきた。近年、Bach2 は、制御性T 細胞、フェクターT 細胞の分化に重要であることもわかってきた。しかし、Bach2の制御機構は不明なままである。これまでに、申請者は、Bach2のリガンドがヘムであり、成熟B 細胞から形質細胞への分化をヘム依存的に促進する現象を発見した。 本研究は「ヘム-Bach2 経路による遺伝子発現制御とその意義」という、「ヘム依存的な遺伝子発現制御機構」の提唱と共に、その生体での意義を追求することにある。Bach2 は形質細胞分化を抑制し、クラススイッチ組換えに必須な因子である。これまでに申請者は、ヘムがBach2 と直接結合し、不活性化することで形質細胞への分化を促進し、液性免疫応答を制御する役割を示してきた。更に、Bach2 が天然変性タンパク質であり、ヘムがBach2 の天然変性領域の構造を変化させること明らかにした。本研究では、これら「ヘムによる免疫の調節」と「ヘムによる天然変性タンパク質制御」という2 つの概念に基づき、免疫細胞における「ヘム依存的な遺伝子発現制御機構」の解明を目指す。具体的には、「Bach2 の天然変性領域とDNA メチル化酵素(Dnmt1)における相互作用領域の決定」と「ヘム-Bach2 経路の標的遺伝子の候補遺伝子の探索とDNA メチル化状態変化の検討」という点に注目しいてく。本研究が完成すれば、生体内でヘム濃度変化が液性免疫および自然免疫の重要なシグナル因子となることが証明される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.Bach2 の天然変性領域とDNA メチル化酵素における相互作用領域の決定:大腸菌を用いて発現・精製したBach2の天然変性領域(331-520アミノ酸領域)と、昆虫細胞を用いて発現させ精製したDNAメチル化酵素を調整し、ビアコアシステムを用い両者の結合能を検討した。この系において、ヘム非存在化において結合能が検討できることを期待した。しかしながら、ヘム非存在化では、Bach2の天然変性領域とDNAメチル化酵素の直接的な結合能について評価することはできなかった。今後は、ヘム存在化において同様な検討を行うため、ヘム濃度の至適条件を検討していく。 2. Bach2-DNAメチル化酵素相互作用の生理学的意義の検討:B細胞株を用いたBach2のChip-seq法(次世代シークエンス解析)の解析結果から、DNAメチル化酵素遺伝子の制御領域にBach2の結合領域が存在することが見いだされた。この結果か、同定したDNAメチル化酵素の遺伝子発現がBach2によって直接制御されている可能性が考えられた。この生理的意義を解明するため、ウイルス感染によるDNAメチル化酵素のノックダウンplasmidを作成した。ノックダウン条件については確定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2.Bach2 の天然変性領域とDNA メチル化酵素における相互作用領域の決定:前年度達成できなかった、ヘム存在化におけるBach2の天然変性領域(331-520アミノ酸領域)と、昆虫細胞を用いて発現させ精製したDNAメチル化酵素の結合能について、ビアコアシステムを用いた検討を進める。これまでBach2の天然変性領域における、あらたな大腸菌発現系を作成している(Bach2の天然変性領域を100アミノ酸ずつに分割した構築)。この発現系に対し、精製したDNAメチル化酵素とのpull-down実験を行い、相互作用領域を同定していく。 3.前年度までに、ウイルス感染によるDNAメチル化酵素のノックダウンplasmidの作成および条件検討まで完了している。本年度は、マウス脾臓B細胞を用いてDNAメチル化酵素遺伝子のノックダウン実験を行い、Bach2の標的遺伝子に対する効果を検討していく。更に、「ヘムがない条件で培養した細胞」と「ヘムがある条件で培養した細胞」においてDNAメチル化酵素のクロマチン免疫沈降を行い、ヘムの有無でBach2の標的遺伝子のメチル化状態の変化について検討していく。
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