2016 Fiscal Year Research-status Report
低分子量Gタンパク質Ralによる癌化、浸潤・転移の分子機構
Project/Area Number |
16K08574
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白川 龍太郎 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50581039)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Ral / RalGAP / 低分子量GTP結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
RalはRas類似の低分子量GTP結合タンパク質であり、哺乳類には互いに約80%の相同性を持つRalAとRalBが存在する。エキソサイトーシス、エンドサイトーシスなどメンブレントラフィックの制御がRalの主な機能であるが、その他にもRalはアクチン細胞骨格、細胞の増殖、遊走や生存の制御など様々な機能を有している。 Ralはがん遺伝子産物Rasの下流で活性化されることが知られており、近年の多くの知見により、Ralの異常な活性化が、がん化やがんの浸潤・転移に深く関わっていることが示唆されている。研究代表者はRalの不活性化酵素Ral GTPase-activating protein (RalGAP)複合体を分子同定し、RalGAPの発現低下にともなうRalの恒常的な活性化が、膀胱がんの浸潤・転移に重要であることを報告した(Saito et al., Oncogene, 2013)。しかしながら、がん化、浸潤・転移を担うRal下流経路の分子メカニズムについてはほとんどわかっていない。 本研究は、研究代表者が新たに同定したRalの下流シグナリング経路の解析を通してRalによるがん化、浸潤・転移促進の分子メカニズムを明らかにことを目的とする。また、新たに作製したRalGAPβコンディショナルノックアウトマウスを用いて組織特異的にRalが恒常的に活性化したマウスを作製し、Ralのがん化、浸潤・転移における役割について生体を用いた解析を推進する。本年度は主に研究代表者が同定した新規Ral結合タンパク質p140のリコンビナントタンパク質、ノックアウト細胞を用いたin vitroでの解析、およびRalGAPコンディショナルノックアウトマウスの解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に研究代表者が新たに同定したRal結合タンパク質p140について解析を進めた。p140はGTP型RalA、RalBに特異的に結合することを確認した。また、p140、およびp140結合タンパク質をバキュロウイルス発現系により作製し、Ralによるp140機能制御の分子メカニズムの解析を進めた。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いることによりp140のノックアウト細胞を樹立することに成功した。これらを用いRalの恒常的活性化によるがん化、浸潤・転移促進の分子メカニズムの解析を行った。 RalGAP複合体は触媒サブユニットα1またはα2と、共通サブユニットβのヘテロ複合体であり、α1とα2には機能的な冗長性が存在する。したがって本計画では、Ral活性化の生体における意義を明らかにするためにRalGAPβのコンディショナルノックアウトマウスを樹立した。本年度は、本マウスとcreリコンビナーゼ発現マウスを掛け合わせることで組織特異的にRalGAPが欠失したマウスを作製することができた。また、同マウスよりマウス胎児繊維芽細胞を樹立し解析を進めた。 以上より、本研究計画はおおむね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に作成することができたRal結合タンパク質p140のノックアウト細胞、リコンビナントp140、およびp140結合タンパク質を用いRalの活性化が細胞の浸潤・転移能に与える影響、およびその分子メカニズムを明らかにしていく。特にp140により制御されるがん抑制遺伝子径路とRalの機能的な関わりにについての解析を推進する。 また、樹立したRalGAP組織特異的ノックアウトマウスを用いRalの恒常的活性化が生体におよぼす影響を解析する。RalGAP単独のノックアウトではがん化に十分でない可能性があるため、コンディショナルK-RasG12Vマウスと掛け合わせることでRas誘導性のがんの悪性化にRalが与える影響を解析していく計画である。化学発がんモデルにおけるがんの悪性化についても評価する。 これらの計画により、Ralの恒常的な活性化ががん化、がんの浸潤・転移におよぼす影響、およびその分子メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は当初計画の通り飼育マウスが繁殖せず、マウス遺伝子型解析用の試薬類の新規購入をする必要がなかった。したがって、その分の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は計画通りに飼育マウス数が増加するため、その遺伝子型解析のために次年度使用額を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] A CD57+ CTL Degranulation Assay Effectively Identifies Familial Hemophagocytic Lymphohistiocytosis Type 3 Patients2017
Author(s)
Hori M, Yasumi T, Shimodera S, Shibata H, Hiejima E, Oda H, Izawa K, Kawai T, Ishimura M, Nakano N, Shirakawa R, Nishikomori R, Takada H, Morita S, Horiuchi H, Ohara O, Ishii E, Heike T
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Journal Title
J Clin Immunol.
Volume: 37
Pages: 92-99
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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