2017 Fiscal Year Research-status Report
低分子量Gタンパク質Ralによる癌化、浸潤・転移の分子機構
Project/Area Number |
16K08574
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白川 龍太郎 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50581039)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Ral / RalGAP / 低分子量GTP結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
RalはRasファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質であり、細胞の増殖や生存、メンブレントラフィック、アクチン細胞骨格の制御など多彩な機能を担っている。他のGTP結合タンパク質と同様に、RalもGEF(guanine nucleotide exchange factor)とGAP(GTPase-activating protein)による制御を受ける。近年の多くの知見はRalの異常な活性化がRas誘導性のがん化に重要であることを示してる。研究代表者らはこれまでに、膀胱がんにおいてRalGAPアイソフォームの1つであるRalGAPα2の発現が低下し、Ralの活性が亢進していることを見いだした。また、RalGAPα2のノックアウトマウスを用いた解析により、RalGAPの発現低下が膀胱がんの浸潤に関与することを報告した。本研究課題では、他のがんにおけるRalGAPの発現を解析し、マウスモデルを用いてがんの浸潤、転移におけるRal/RalGAPの役割を明らかにすることを目的とした。 平成29年度は主に口腔がん、膵臓がんを用いた解析を行い、これらのがんにおいてもRalGAPの発現が低下しており、それにより引き起こされるRalの活性化が、がん細胞の遊走や浸潤に重要であることを見いだした。また、がんにおけるRalGAPの発現低下がエピジェネティックな制御によるものであることを確認した。また、RalGAPβのコンディショナルノックアウトマウスを確立し、発がん性Ras誘導性の膵臓発がんにおけるRal/RalGAPの関与を明らかにするために、膵臓組織特異的creリコンビナーゼ発現マウス(Ptf1a-cre)、およびコンディショナルK-RasG12D発現マウスの導入を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は主に口腔がん、膵臓がんにおけるRalGAPの解析を行った。口腔がん細胞においてRalGAPのノックダウンが細胞の遊走、浸潤を亢進することを見いだした。また、口腔がん検体においてRalGAPの発現が低下していることを免疫組織化学法により確認した。膵臓がん細胞においても同様にRalGAPのノックダウンにより細胞の遊走が亢進されることを確認した。また、膵臓がん検体を用いた解析によりがん組織ではRalGAPの発現が低下していることが示唆された。膀胱にではRalGAPα2が優位に発現していたが、膵臓組織ではもう1つのアイソフォームであるRalGAPα1が優位であった。ほぼ全ての膵臓がんではK-Rasに変異がみられ、Ras/RalGEF経路によりRalの活性が亢進していることが知られている。しかし、Rasの変異の有無よりもRalGAPの発現量の変化の方ががRalの活性により重要であるという知見が得られた。また、がんにおいてはエピジェネティックな変化によりRalGAPの発現が低下していることを見出した。 また、RalGAPβコンディショナルノックアウトマウスと発がん性K-Ras誘導性の膵臓がんマウスモデルを用いた解析の準備を進めた。さらに、Ral活性化による浸潤、転移亢進の分子メカニズムを明らかにするために、Ralの新規結合タンパク質の解析を推進した。 以上より、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えらる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、口腔がん、膵臓がん細胞を用いて主にin vitroでのRalGAPの機能評価、およびヒト口腔がん、膵臓がん検体を用いたRalGAP発現の解析を行った。いずれにおいてもRalGAPの発現低下とがんの浸潤、転移の関連が示唆された。平成30年度はRalGAPノックアウトマウスを用いて、RalGAPの発現喪失が浸潤、転移に及ぼす影響を主に膵臓がんに注目して解析する。そのために膵臓組織特異的creリコンビナーゼ発現マウス(Ptf1a-cre)、およびコンディショナルK-RasG12D発現マウスを用いた発がん性Ras誘導性の膵臓がんマウスモデルを用いる。本マウスモデルにRalGAPβコンディショナルノックアウトマウスを掛け合わせ、RalGAPのノックアウトがRas誘導性の膵臓がんの浸潤、転移に及ぼす影響を生体を用いて解析する計画である。Ralは発がん性Rasの下流においてRalGDS等のRalGEFを介して活性化されることが知られているが、細胞レベルではRas/RalGEF経路による制御よりもRalGAPの発現量による制御の方がより効果が大きいことが分かっており、生体においてもRalGAPの発現の違いにより、Ras誘導性のがんの浸潤、転移に大きな差を生む可能性があると考えている。 また、Ralによる浸潤、転移亢進の分子メカニズムを明らかにするために、すでに同定しているRalの新規結合タンパク質の機能解析を推進する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Human CTL-based functional analysis shows the reliability of a munc13-4 protein expression assay for FHL3 diagnosis2018
Author(s)
Shibata H, Yasumi T, Shimodera S, Hiejima E, Izawa K, Kawai T, Shirakawa R, Wada T, Nishikomori R, Horiuchi H, Ohara O, Ishii E, Heike T
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Journal Title
Blood
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Metformin directly binds the alarmin HMGB1 and inhibits its proinflammatory activity2017
Author(s)
Horiuchi T, Sakata N, Narumi Y, Kimura T, Hayashi T, Nagano K, Liu K, Nishibori M, Tsukita S, Yamada T, Katagiri H, Shirakawa R, Horiuchi H
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Journal Title
J Biol Chem
Volume: 292
Pages: 8436-8446
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Metformin directly binds the alarmin HMGB1 and inhibits its proinflammatory activity2017
Author(s)
Natsumi Sakata, Takahiro Horiuchi, Yoshihiro Narumi, Tomohiro Kimura, Takashi Hayashi, Keisuke Nagano, Keyue Liu, Masahiro Nishibori, Sohei Tsukita, Tetsuya Yamada, Hideki Katagiri, Ryutaro Shirakawa, and Hisanori Horiuchi
Organizer
日本生化学会東北支部 第83回 例会・シンポジウム
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[Presentation] Metformin directly binds the alarmin HMGB1 and inhibits its proinflammatory activity2017
Author(s)
Natsumi Sakata, Takahiro Horiuchi, Yoshihiro Narumi, Tomohiro Kimura, Takashi Hayashi, Keisuke Nagano, Keyue Liu, Masahiro Nishibori, Sohei Tsukita, Tetsuya Yamada, Hideki Katagiri, Ryutaro Shirakawa, and Hisanori Horiuchi
Organizer
12th International Symposium of the Institute Network
Int'l Joint Research
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[Presentation] Metformin directly binds the alarmin HMGB1 and inhibits its proinflammatory activity2017
Author(s)
Natsumi Sakata, Takahiro Horiuchi, Yoshihiro Narumi, Tomohiro Kimura, Takashi Hayashi, Keisuke Nagano, Keyue Liu, Masahiro Nishibori, Sohei Tsukita, Tetsuya Yamada, Hideki Katagiri, Ryutaro Shirakawa, and Hisanori Horiuchi
Organizer
2017年度生命科学系学会合同大会(第90回日本生化学会大会)
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