2016 Fiscal Year Research-status Report
血管形成の必須因子であるリゾホスファチジン酸の作用機序
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16K08575
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
安田 大恭 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70594951)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リゾホスファチジン酸 / GPCR / 血管新生 / Sprouting |
Outline of Annual Research Achievements |
リゾホスファチジン酸(LPA)シグナルに関連する分子が血管形成に必須であることが既に報告されているが、この際にLPAが作用する受容体やその細胞内シグナルの詳細は未解明のままである。我々はこれまでに、LPA4とLPA6の二重欠損マウスが胎生期の血管形成不全が原因で100%致死となること、およびヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に発現するLPA4とLPA6がNotch経路の血管制御因子DLL4の発現を抑制すること、そしてこの発現抑制には三量体Gタンパク質G12/13、低分子量Gタンパク質Rho、転写共役因子YAP/TAZが関わることを明らかにしてきた。今回我々はLPA4とLPA6による血管新生調節機序をより詳細に解明する目的で、HUVECを用いたフィブリンゲルビーズ解析(血管萌出解析)においてLPA4/LPA6及びそのシグナルを阻害したときの影響を観察し、合わせてNotch経路の阻害剤であるDAPTの効果も調べた。その結果、LPA4/LPA6、G12/13、YAP/TAZの各siRNA処理、およびRhoキナーゼ (ROCK) 阻害剤処理は、どれもsprouting(萌出)の長さや数を有意に低下させることが明らかになった。またDAPT処理は、上記siRNAや阻害剤の効果を有意に抑制した。以上の結果から、LPA4/LPA6シグナル低下によるsprouting抑制は、DLL4の過剰発現が一因であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HUVECを用いた血管制御因子の発現解析やフィブリンゲルビーズ解析によりi) 血管内皮細胞におけるLPA4/LPA6の細胞内シグナルが血管新生調節に重要であること、ii) そのシグナルにはG12/13、Rho、ROCK、YAP/TAZが関与すること、iii) LPA4/LPA6シグナル低下に伴う血管新生の抑制はDLL4の過剰発現が一因であること、を示唆していると考えられた。これらはLPA4/LPA6の血管形成の分子機構解明と血管内皮細胞における血管新生機能の解明という本研究における重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
タモキシフェン誘導血管内皮細胞特異的LPA4/6二重欠損マウスにおける、胎生期および新生児期(網膜)の血管の解析を行い、DLL4の発現異常と血管形成異常の整合性をin vivoで確かめる。加えて、 二重欠損マウス由来血管内皮細胞を用いた細胞増殖・遊走・細胞萌出機能の解析から、二重欠損による血管形成異常のメカニズムにさらに迫る。
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