2017 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質を介した新しい小胞体ストレス応答メカニズムの解明
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16K08585
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊集院 壮 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00361626)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホスホイノシタイド / 小胞体ストレス / INPP5K / PI(4)P |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスホイノシタイドホスファターゼINPP5Kのbi-alleic mutationが先天性筋疾患であるマリネスコシェーグレン症候群の患者より2017年に複数同定された。これらの変異はいずれも酵素活性を低下させるものであった。マウス筋芽細胞にこれらの変異INPP5Kを導入したところ、小胞体ストレス依存的に産生されるPI(4)P量の低下が認められた。これはINPP5Kが小胞体ストレス依存的にPI(4,5)P2からPI(4)Pを産生していることを表している。また、これらの変異体の発現によって、小胞体ストレス応答のマーカーであるGRP78,Xbp-1s,Chopなどの発現が少し上昇した。マリネスコシェーグレン症候群の患者で見られるSIL1遺伝子の変異では小胞体ストレス応答の上昇が認められることが分っていることから、INPP5K遺伝子変異による骨格筋での小胞体ストレス応答の上昇が、先天性筋疾患の一因であることが示唆された。 また、INPP5KによるPI(4)P産生と細胞内のカルシウム動態が大きく関わることが示唆された。細胞内カルシウム濃度の上昇がINPP5Kの酵素活性を上昇させ、また、PI(4)P産生によって細胞内へのカルシウム流入が低下することも明らかになった。小胞体ストレス応答は小胞体内カルシウム濃度に依存することから、INPP5Kによる細胞内カルシウム制御が、小胞体ストレス応答制御の直接的な原因であることが示唆された。 以上の結果はPI(4,5)P2ホスファターゼの中でもINPP5Kに特異的な現象であったことから、INPP5Kによる細胞内の局所的なPI(4)P産生が起こっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はホスホイノシタイド代謝を介した小胞体ストレス応答制御を目的としているが、現在INPP5KによるPI(4)P産生が小胞体ストレス応答を制御しているところまで明らかとなった。小胞体ストレスそのものを減少させているメカニズムを明らかにすることによって、ホスホイノシタイドを介した新しい小胞体ストレス制御機構が明らかになると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
INPP5K遺伝子変異によって、小胞体ストレス応答が増加し、筋疾患の病態が現れる直接的な原因を明らかにする。PI(4)P産生が起こらないことによって小胞体形態に起こる異常と、その結果起こる小胞体膜の蓄積について骨格筋細胞や組織を用いて解析を行い、小胞体ストレスとホスホイノシタイドをつなぐ新しい機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究はほぼ計画通り遂行することができたが、共同研究施設利用料が予定を下回ったため、次年度使用額が135円生じた。この金額は次年度の消耗品費として遺伝子導入試薬の購入に使用する計画である。
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