2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of ER stress response by phopholipids
Project/Area Number |
16K08585
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊集院 壮 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00361626)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ホスホイノシタイド / 乳がん / 運動 / ホスホイノシタイドホスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞ではがんの種類・病型に依存したホスホノシタイド代謝異常が認められる。中でもPI3キナーゼの活性化やPTENの不活性化によるホスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)の増加とPI3キナーゼシグナルの恒常的な活性化は非常に多くのがん細胞で認められる。一方で、ホスファチジルイノシトール3,4-2リン酸[PI(3,4)P2]やホスファチジルイノシトール4,5―2リン酸[PI(4,5)P2]に関してもがん細胞形態・細胞運動・浸潤転移への関与が示唆されている。本研究では、がん細胞におけるPIP3 5-ホスファターゼによるPI(3,4)P2の産生が能動的に行われていることを明らかにした。高転移能を有するMDA-MB-231乳がん細胞において、PIP3 5-ホスファターゼSHIP2やPIPPはPIP3シグナルを変化させることなくPI(3,4)P2依存的な細胞運動亢進や接着班崩壊促進を起こしていた。一方、PIP3 やPI(3,4)P2に対する3-ホスファターゼPTENは反対の効果を示した。このことから少なくとも乳がん細胞ではPIP3よりもPI(3,4)P2の方が優位に細胞運動や浸潤能に寄与していることと考えられた(福本ら、2017)。しかしながら、5-ホスファターゼに因るがん細胞浸潤転移能の制御についてはがん種およびがん遺伝子の発現の状態によって大きく変動する。例えば膠芽腫において、SHIP2は主にPI(4,5)P2の脱リン酸化が接着班形成と運動能に寄与する。私はこのパラメータが細胞内ホスホイノシタイドの絶対量に影響されることを明らかにした。これはがん遺伝子・がん抑制遺伝子・がんシグナルなどに加えてホスホイノシタイド量そのものが、新たながん細胞のダイナミズム(悪性度や浸潤転移能)の指標となりうる可能性を示した(伊集院、2019)。
|