2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08586
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小谷 武徳 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40455960)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞寿命 / 腸上皮細胞 / 短鎖脂肪酸 / 腸内細菌 / 腸内容物 |
Outline of Annual Research Achievements |
個々の組織を形成する細胞はそれぞれ固有の寿命をもつことが知られているが、細胞ごとに異なる寿命制御の機構についてはほとんど明らかにされていない。そこで研究代表者は、腸上皮細胞をモデルとして用い、細胞外・細胞内の両面から腸上皮細胞の寿命制御機構の分子基盤について明らかにすることを目的とした研究を進めている。 本年度、研究代表者は腸上皮細胞の寿命制御を行う細胞外因子を同定すべく、各種クロマトグラフィーの組み合わせによってマウス腸内容物を分画し、腸上皮細胞の寿命を制御する因子が濃縮された画分を得た。現在、この画分について質量分析を行うことで腸上皮細胞の寿命制御を行う細胞外因子の同定を試みている。 一方、研究代表者は昨年度までに腸上皮細胞の寿命制御を行う細胞内因子としてmTORC1に注目してきており、これまでに腸上皮細胞特異的Tsc2ノックアウトマウスの解析により、腸上皮細胞でのTsc2欠損によって誘導されるmTORC1の活性化が小腸上皮細胞の短命化及び分化の異常を誘導する可能性を見出していた。そこで本年度は、腸上皮細胞特異的Tsc2ノックアウトマウスから単離培養した腸オルガノイドの解析を行った。その結果、野生型マウス由来の腸オルガノイドに比べ、腸上皮細胞特異的Tsc2ノックアウトマウス由来の腸オルガノイドは成長が著しく早いことが明らかとなった。また、この成長促進はmTORC1活性に対する阻害剤ラパマイシンにより、顕著に抑制されることも明らかにした。 さらに、本研究の開始時まで常在細菌が腸上皮細胞の寿命を制御していることを見出しており、本年度は常在細菌と腸上皮細胞のmTORC1活性の関係性についても解析を進めたが、その過程でマウスの常在細菌が成体マウス脳での神経新生も制御していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた研究内容を順調に進めることが出来、更なる研究の進展が期待できる研究成果を得ているため。また、申請時は予想していなかったが、常在細菌が腸上皮細胞の寿命制御のみではなく、成体マウス脳での神経新生も制御していることを見出し、公表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究内容を継続する。特に、腸内細菌に由来しない腸上皮細胞の寿命を制御する因子について同定を進める。同定後はその因子につき、作用機序や生理機能についてマウス個体や細胞レベルで明らかにして行く。 また、腸上皮細胞特異的Tsc2ノックアウトマウスを用いることで、Tsc2の欠損によるmTORC1の活性化が腸上皮細胞の短命化を起こす詳細なメカニズムをさらに明らかにすると同時に、腸上皮細胞の短命化がマウス個体に及ぼす影響についても解析を進める。本年度は特に小腸の上皮細胞について着目した解析を進めて来たが、今後は大腸にも着目し、腸上皮細胞の寿命制御と大腸で見られる疾患(大腸炎、大腸がんなど)の関係性を明らかにする。
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Research Products
(9 results)