2017 Fiscal Year Research-status Report
三次元器官の構築と維持を司るHippo-Yapシグナル伝達系の解析
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16K08588
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
浅岡 洋一 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10436644)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞内シグナル伝達 / 三次元器官構築 / YAPメカノホメオスターシス / 小型魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の体は複雑な三次元的形態をしており、組織や器官が正しく形作られ適切に配置されることにより初めて機能を発揮できる。こうした三次元的な形態形成の場には組織張力の制御が不可欠であるが、その詳細な分子機構については不明な点が多い。これまでに我々は、初期胚形成不全メダカ変異体のスクリーニングの過程において、体全体が扁平化するhirame (hir) メダカ変異体を見出した。これは器官サイズを制御するHippoシグナル伝達系の核内標的分子YAPの変異が原因であり、YAPがアクトミオシンネットワークの活性制御を通じて組織張力を調節し、三次元組織の構築と配置を統御していることが判明した [Nature (2015)]。しかしながら、Hippo-YAPシグナル伝達系がいかにして上皮組織を構成する個々の細胞間の力学的な相互作用を統御し、三次元的な組織構築・維持を実現しているのかという問題は依然として謎に包まれている。我々はこうした背景を踏まえ、メダカ胚の立体組織形成・維持において、組織の力学特性を統御するYAP分子ネットワークの実体を明らかにすることを目的とした。RNA-seq法によりメダカ野生型とhir変異体との間の比較トランスクリプトーム解析を行い、hir変異体において顕著な発現変動を示す複数の遺伝子を明らかにした。これらの遺伝子群の中にYAPメカノホメオスターシスを支える重要因子が含まれる可能性が考えられる。そこでYAPメカノ分子ネットワークの候補分子について、CRISPR-Cas9法を用いたノックアウトフィッシュの作成を遂行した。本ノックアウトフィッシュの解析をさらに推進することにより、YAPメカノ分子ネットワークの破綻がどのように疾患の発症・増悪へ関与するのかを明らかにできるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の研究計画の通りYAPメカノホメオスターシスの分子基盤を支える候補遺伝子のノックアウトフィッシュの作成に着手しており、本候補遺伝子の詳細な解析をさらに進めることにより、本研究の目的である「YAPシグナル伝達系による組織の三次元構築メカニズムの解明」につながると考えられるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、CRISPR-Cas9システムを用いたノックアウトフィッシュ系統の樹立および詳細な解析を行うことにより、YAPメカノホメオスターシスの分子ネットワークの全貌を明らかにできると考えている。またこれと並行して、三次元細胞培養系を用いた解析についてもさらに加速させる予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)他の研究グループが発表した学会データならびに論文データを精査した結果、当初の研究方法に加えて新たな研究手法の開発ならびに三次元オルガノイド培養系を用いた解析を検討する必要が生じたため。 (使用計画) 組織のメカノホメオスターシスを制御するYAP分子ネットワークの分子基盤を明らかにするため、小型魚類の解析に加えて新たに三次元オルガノイド培養系の樹立および解析が可能であるかどうかを検討する予定である。
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