2016 Fiscal Year Research-status Report
脂質代謝が駆動する転写活性化とダイレクトリプログラミングの解析
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16K08592
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀澤 健一 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70424207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30415195)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / 転写制御 / アセチルCoA / 脂肪酸 / ベータ酸化 / 核内局在 / アセチル化 / Foxa |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は研究代表者がこれまでに発見した、脂肪酸ベータ酸化酵素群の核内局在及び転写因子との共局在に関して、その機能的な解析を目的としている。転写因子による特定遺伝子の転写亢進には、その遺伝子座のヒストンが特異的なアセチル化修飾を受けることが必要である。アセチル化には、触媒であるアセチル基転移酵素(HAT)及びアセチル基ドナー分子であるアセチルCoAが必須である。アセチルCoAは通常、ミトコンドリア内でTCAサイクルにより産生されるが、非常に不安定な物質であるのと同時に、核膜を透過することができないことから、この分子を核内に供給する何らかの能動的な機構が存在すると考えられてきた。最近10年ほどの間に、様々な代謝経路によりアセチルCoAを核内で現地生産する仕組みが明らかされてきたが、まだ不明な部分が多い。 研究代表者は、Foxaという肝臓発生に重要な役割を果たす転写因子の機能を明らかにする目的で、IP-MSによるタンパク質複合体の解析を行った。その結果、転写関連因子に加えて、多数の脂肪酸ベータ酸化酵素群が検出された。メチル化などの他のヒストン修飾の研究から、転写因子を介した代謝酵素のゲノム上の局在が、局所的な修飾基ドナー分子の濃度上昇を引き起こし、結果として部位特異的なヒストン修飾を促すことが知られていたことから、これらベータ酸化酵素群が局所的なアセチルCoA濃度の上昇を引き起こし、Foxa結合部位周辺のアセチル化、ひいては転写の亢進を引き起こすものと考えた。 そこでH28年度は、細胞生物学的及び生化学的手法を用いて、当該ベータ酸化酵素群が核内局在することの確証を得るための実験を行った。いつくかの候補タンパク質について、蛍光免疫染色と共焦点レーザー顕微鏡による観察、及び共免疫沈降による物理的相互作用の確認を行い、それらが核内でFoxaと複合体を形成していることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、蛍光免疫染色と共焦点レーザー顕微鏡を用いた画像解析、及び共免疫沈降とウエスタンブロッティングによる生化学的解析の2面からの検討を行い、候補となる複数の脂肪酸ベータ酸化酵素群が細胞核内に存在し、転写因子と共局在することの確証を得ている。また、本計画以前にIP-MSによりそれら候補を発見したサンプルである人工肝細胞様細胞(iHep細胞)だけでなく、他の培養細胞株を用いた検証でも同様の結果を得ており、これは今回解析対象とする現象が、特定の細胞や条件に限定的なものではなくユニバーサルな現象であることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
物理的な核内局在、及び転写因子との共局在を明らかにすることができたため、今後はその機能的な側面に着目した解析に注力する。具体的には、安定同位体で標識した脂肪酸分子と、抽出した細胞核、または免疫沈降したタンパク質複合体を用いることで、アセチルCoAが局所的に生産されることをin vitroで証明する。また同様に安定同位体標識脂肪酸を用いることで、脂肪酸代謝を介したヒストンアセチル化修飾が行われることを明らかにする。さらに、NLSを付加したベータ酸化酵素の細胞株への過剰発現などの実験を行い、核内で行われるアセチルCoA生産のヒストン修飾、及び転写に与えるインパクトを明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)