2016 Fiscal Year Research-status Report
凝固第XIII因子(トランスグルタミナーゼ)による核内タンパク質修飾の意義を探る
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16K08608
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
惣宇利 正善 山形大学, 医学部, 准教授 (20292419)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酵素 / トランスグルタミナーゼ / 凝固第XIII因子 / 血球分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.FXIII-A欠損雄マウスとTGM2欠損雌マウスを交配して二重ヘテロ(FXIII-A+/- TGM2+/-)マウスを作成し、さらに二重ヘテロマウス同士を交配した。2017年3月末までに96匹が出生し、うち5匹が二重欠損(FXIII-A-/- TGM2-/-)マウス(雄1、雌4)と確認された。 2.野生型、FXIII-A欠損、TGM2欠損、二重欠損各マウスの大腿骨から採取した骨髄細胞をビオチン化アミン(BAPA)存在下でインキュベートし、細胞内タンパク質へのBAPA取り込みをウエスタンブロットで解析した結果、骨髄細胞全体での核分画タンパク質へのアミン取り込みはTGM2が大半を担っており、FXIII-Aの寄与は部分的であることが示された。一方、骨髄細胞をトロンボポエチン(TPO)存在下で3日間培養し、牛血清アルブミン濃度勾配で調製した巨核球分画についてBAPA取り込み反応を行なったところ、野生型と比べてFXIII-A欠損でタンパク質へのBAPA取り込みが著しく低下し、TGM2欠損と同程度であったことから、巨核球における核タンパク質修飾へのFXIII-Aの強い関与が示唆された。 3.昨年度までにFXIII-Aの細胞内基質候補として同定したタンパク質数種類について、BHK細胞を用いてcDNA発現し、細胞内BAPA取り込み反応後に免疫沈降を行なった結果、SFPQがFXIII-Aの細胞内基質となることを確認した。抗SFPQ抗体を用いたウエスタンブロット解析により、ヒト巨核球系MEG-01細胞およびヒト単球系THP-1細胞にSFPQが存在することを確認した。MEG-01およびTHP-1細胞をBAPAあるいはポリアミン(スペルミジン、スペルミン)とインキュベートした場合にSFPQの分解が観察されること、その分解がプロテアソーム阻害剤やトランスグルタミナーゼ(FXIII-A)阻害剤で抑制されることから、FXIII-Aのトランスグルタミナーゼ活性による修飾がSFPQのプロテアソームでの分解を促進していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた巨核球分化におけるトランスグルタミナーゼ活性の影響を調べるには個体数が足りないものの、無事に二重欠損マウスが産生されたこと、二重欠損マウスの初期解析で巨核球におけるアミン取り込みへのFXIII-Aの関与が確認できたことは大きな収穫である。また、SFPQがFXIII-Aの基質となることを確定できたことで、FXIII-Aを含むトランスグルタミナーゼ活性によるアミン修飾がSFPQの分解制御に機能しうることを見出すに至っているので、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1.二重欠損雄マウスを確保できたので、安定した継代飼育が見込まれる。各マウスともに個体数を増やして、骨髄細胞から巨核球を含む各血球分化へのFXIII-A, TGM2, 二重欠損の影響、トランスグルタミナーゼ阻害剤やポリアミン添加の効果などを同時に検討する。 2.現在保有している抗SFPQ抗体はマウスSFPQとの反応性が弱いので、マウスSFPQを検出できる抗体を新たに入手して、血球分化におけるSFPQの変動を調べる。同時に、トランスグルタミナーゼ活性によりBAPAが取り込まれることが確認されている他のタンパク質についても、血球分化時の変動を追跡する。 3.SFPQの標的となっている遺伝子、特にnon-coding RNAについて、各欠損マウス細胞での発現を比較検討する。
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Research Products
(1 results)