2016 Fiscal Year Research-status Report
リンパ管内皮間葉移行を司る分子機構の解明と関連疾患治療法の開発
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16K08614
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
渡部 徹郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00334235)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液は心臓から動脈へ送り込まれ毛細血管・静脈を経て心臓へ戻る。この血管系とは別個に組織液の排水路を形成するものがリンパ管である。リンパ管は体液恒常性の維持に重要な役割を果たすことから、その機能不全はリンパ浮腫などの病態を引き起こす。血管を形成する血管内皮細胞はがんや心疾患などの病態においてVE-cadherinなどの内皮細胞マーカーの発現が低下し、SM22αなどの間葉系細胞マーカーの発現が上昇すると共に間葉系細胞へと移行することが示されており、この現象は内皮間葉移行(EndMT)と呼ばれている。最近リンパ管内皮細胞においてもEndMTが起きることが報告されたが、その機序については未解明な部分が多く残されている。そこで本研究課題においてはリンパ管内皮細胞のEndMTを誘導する因子を同定し,詳細な分子機序を明らかにするとともに、関連疾患の治療法の開発を試みる。得られた結果はリンパ管内皮細胞の形質維持の分子基盤を解明することで学術的に大きな波及効果を持つのみならず、関連疾患などの新規治療法の開発に役立つことが期待され、社会に対する貢献は大きい。今年度は炎症性サイトカインの一つであるTGF-βのリンパ管内皮細胞のEndMTに対する効果を検討した。TGF-β存在下で培養したリンパ管内皮細胞における間葉系細胞マーカーの発現を検討したところ、SM22αなどの発現が上昇し、リンパ管内皮細胞のマーカーであるLYVE-1の発現が低下することが示された。また、TGF-β受容体キナーゼ阻害剤により内因性TGF-βシグナルを抑制するとSM) 22αの発現が低下し、LTVE-1の発現が上昇することが明らかとなった。以上の結果から、TGF-βが血管内皮細胞と同様にリンパ管内皮細胞においてEndMTを誘導していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においてはリンパ管内皮細胞のEndMTを誘導する因子を同定し、さらにその分子機序を進めているところであるので、本課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、EndMTの誘導因子として同定されたTGF-βがリンパ管内皮細胞においてどのような遺伝子発現を介してその作用を発揮しているかin vitroの実験系で検討を進める予定である。
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Research Products
(3 results)