2017 Fiscal Year Research-status Report
脂質輸送-脂質代謝連関による膜ドメイン機能の制御機構とその腫瘍生物学的意義の解明
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16K08618
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 祥生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (00444878)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂質代謝 / がん / 膜ドメイン / 細胞内脂質輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜ドメインはがん細胞の悪性形質発現に極めて重要な役割を果たしているが、その機能調節機構に関する知見は乏しい。本研究では、脂質トランスポーターの発現が脂質代謝変化を誘導する分子機構並びに、脂質代謝変化が膜ドメイン機能を制御する分子機序を明らかにし、脂質輸送-脂質代謝連関ががんやその他の疾患に及ぼす影響について明らかにすることを目的としている。 昨年度に引き続き、がん細胞等における脂質代謝に関する解析を中心に行った。特に、SREBPがmTORシグナルによって制御されていることが示される他、mTORが小胞体のコレステロール含量を制御することを示唆するデータを得た。 コレステロール代謝産物である酸化ステロールは、コレステロール合成の最も強力な抑制因子の一つである。また、酸化ステロールは膜構造及び膜機能に影響を与えることが報告されている。しかしながら、内因性の酸化ステロールに関する解析報告は少なく、酸化ステロールの産生調節や酸化ステロールががん細胞に及ぼす影響等についてさらに解析を進める必要がある。そこで、内因性の酸化ステロール産生ががん細胞の悪性形質や脂質代謝に及ぼす影響について検討するため、コレステロールの25位に水酸基を付加する酵素(CH25H)を安定発現する細胞株を樹立した。その結果、CH25H発現細胞株では、SREBPの活性化抑制が認められた他、細胞の増殖も抑制されることが示された。酸化ステロールを産生する酵素は複数あるため、今後は個々の酸化酵素や酸化ステロールががん細胞の脂質代謝や膜ドメイン機能、悪性形質に与える影響等について解析を進める必要がある。 コレステロール代謝制御に関する総説を海外研究者らと共同で、Journal of Lipid Research(Chang, Yamauchi, Hasan, Chang, 2017)に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年7月に東京大学に異動後、研究環境のセットップも順調に進み、実験結果が着実に蓄積されている。がん細胞におけるSREBP制御機構について新しい知見も得られつつあり、来年度は更なる発展が十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
がん細胞におけるSREBPの制御機構について、小胞体コレステロールの調節メカニズムを中心に解析を進める。また、ABCトランスポーターの発現が小胞体コレステロールレベルの制御に果たす役割について、ABCA1だけでなくステロール輸送活性を有するABCGファミリー分子も解析対象として、ABCトランスポーターの発現ががん細胞の脂質代謝や悪性形質に与える影響について解析を進める。乳癌等のがん細胞では27-ヒドロキシコレステロールが、がん細胞の悪性形質に関与することが報告されている。コレステロール代謝の中心的な制御因子である酸化ステロールにも着目し、個々の酸化ステロールやその産生酵素とがん細胞の悪性形質との連関についても検討する。
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Causes of Carryover |
次年度に論文を投稿する予定となったため。2018年度に論文を投稿するために必要な研究試薬等の購入や論文投稿に必要な経費として使用する。
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Research Products
(7 results)