2016 Fiscal Year Research-status Report
オートファジー・リソソーム機能異常を標的とした大腸癌幹細胞標的治療薬の開発
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16K08621
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原口 直紹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30528609)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 癌幹細胞 / オートファジー / リソソーム / リプロファイリング |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の多様性・治療抵抗性は癌治療の最大の障壁であり、故に、癌幹細胞の標的化は極めて重要である。本研究では、オートファジー・リソソーム経路の阻害による大腸癌幹細胞標的化を推進している。大腸癌細胞を用いた解析により、大腸癌幹細胞(CD44V9+/CD133+)分画中の亜集団としてオートファジー活性細胞(LC3B+)及びリソソーム活性陽性細胞(lysosome+)が存在することを見出した。LC3B+及びlysosome+細胞はLC3B-/lysosome-/CD44v9+細胞よりも、sphere形成性(single cell sphere formation)、造腫瘍性(limiting dilution, serial transplantation)が高いこと、また、幹細胞性がオートファジー活性よりリソソーム活性に強く依存していることを見出した。大腸癌細胞株に抗マラリア薬であるクロロキン、ヒドロクロロキン並びにメフロキン処理を行うと、LC3B+/lysosome+/CD44v9+細胞分画の障害が誘導され、さらに、オキサリプラチン併用により抗腫瘍効果が増強されることが見出された。メフロキン処理群では、クロロキンおよびヒドロクロロキンよりも高い抗腫瘍効果が誘導されることが認められ、さらに、メフロキンのオキサリプラチンに対する相乗効果が認められた。メフロキンが他剤よりも高いリソソーム活性阻害作用を有することが解析結果で明らかとなり、メフロキンによる高い抗腫瘍効果は、癌幹細胞に対する高い阻害作用と、オートファジーによるオキサリプラチン耐性の阻害が相乗的に作用しているためと考えられた。メフロキンの大腸癌に対するリプロファイリングは大腸癌幹細胞を含めた包括的な癌細胞標的治療法となる可能性が示されており、現在、マウスでの治療モデルの作成、臨床検体を用いた抗腫瘍効果の確認を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、基礎的検討事項の多くは解析が済んでおり、現在マウスでの治療効果の検討に進んでいる。三次元構築モデルの作成は問題なく行うことができたが、癌細胞との共培養を行うと、癌細胞により組織構築破壊が高度に起こり、三次元構築が破壊されることが判明し解析は不能と判断された。スクリーニングの結果、マラリア薬の中でもメフロキンの抗腫瘍効果が最も高いことが判明し、その作用機序の解明をリソソーム活性に注目し行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
リソソーム合成のキャリアタンパクに対するメフロキンの作用と、その鍵となる分子の分離同定を進め、さらなる標的化と団幹細胞の維持機構に対する分子機構を解明していく。また、前臨床試験に向けた準備を行っていく予定である(メフロキンを用いた進行再発大腸癌治療、また、大腸癌術後補助化学療法としてのXELOX+メフロキン治療)。
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Causes of Carryover |
大腸癌幹細胞の標的化をリソソーム・オートファジー経路の制御にて行う研究であり、研究試薬の相見積もり等を行うことで研究費の節約を念頭に研究を推進しており、差額が報じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、マウスを用いた抗腫瘍効果の検討およびキャリアタンパク解析研究を主に行うことで、新規標的の発掘並びに試験に向けた検討研究を行っていく。
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