2017 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病遺伝子SLC16A11/13のインスリン抵抗性における役割の解明
Project/Area Number |
16K08631
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
原 一雄 東京医科大学, 医学部, 兼任教授 (50359600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲津 正人 東京医科大学, 医学部, 教授 (00297269)
熊谷 勝義 東京医科大学, 医学部, 助教 (20567911)
藤田 英俊 東京医科大学, 医学部, 講師 (90571802)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝素因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本人を対象とした全ゲノム関連解析で同定した2型糖尿病遺伝素因SLC16A11並びに13の機能を個体レベルで解明することを目的とする。前年度に作製したSlc16a11遺伝子欠損マウスの肝臓における糖新生を調べるためピルビン酸負荷試験を実施した。野生型に比較してSlc16a11(-/-)ではピルビン酸負荷後の血糖上昇が抑制されている傾向にあり、ピルビン酸を基質とした糖新生が低下していることが示唆された。最近Landerらがマウス肝細胞の初代培養系でSlc16a11をノックダウンしたところ細胞内外のピルビン酸輸送速度が低下したことを報告しており、今回の結果と合致している。合わせて考えるとSLC16A11は肝臓へのピルビン酸輸送を介して個体レベルでの糖代謝に影響を持つ可能性が示唆された。また、Slc16a13(-/-)は予想されるよりはるかに低い出生率であったため、発生分化の段階で重要な役割を担っている可能性もあると考えられた。これまで全ゲノム解析で同定した2型糖尿病リスク上昇と関連する遺伝子多型は主にイントロンに存在しその機能が明らかでない。今回イントロンに位置する遺伝子多型の近傍に、アミノ酸を置換するSLC16A11並びに13遺伝子変異を数カ所同定した。in silicoの解析では遺伝子産物の機能が低下し機能喪失性遺伝子変異であると考えられた。次年度のゲノムコホートでの関連解析並びにCRISPR/Cas9を利用した機能解析に利用することが出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で個体レベルでの機能解析を行うSlc16a13並びにSlc16a11遺伝子の欠損マウスについて作出を完了し、ピルビン酸負荷試験等で肝臓からの糖新生にSlc16a11遺伝子が関与していることが示唆されるデータを得た点では予定通り研究が進展している。しかしながらトランスポーターとしての機能解析については未だ予定通り進展しておらず、Slc16a13の機能解析は十分に行えていないことから判断すると「やや遅れている」とする。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ゲノムコホートを用いたSLC16A11並びに SLC16A13遺伝子変異とアウトカムとの関連解析:前年度に同定したSLC16A11並びに SLC16A13遺伝子変異と糖尿病との関連をゲノムコホートを利用して解析する。 (2)SLC16A11/13遺伝子多型自体の機能解明:同定したヒトにおけるSLC16A11並びに13遺伝子変異について、それぞれのアリルをCRISPR/Cas9を利用してヒト肝細胞系にノックインする。SLC16A11とSLC16A13両者のリスクアリルのホモ、SLC16A11とSLC16A13それぞれのリスクアリルがヘテロとなるような細胞株を選択する。これらの細胞間で脂質蓄積量、インスリン受容体、受容体基質、PKCのリン酸化、糖新生、脂肪酸合成、燃焼に関与する遺伝子の発現を定量し、SLC16A11並びに SLC16A13のリスクアリルが増加するに従ってインスリン情報伝達系への影響が大きくなるかどうか解析する。 (3)Slc16a11並びにSlc16a13遺伝子の遺伝子改変マウスを利用した個体レベルでの機能解明: Slc16a11およびSlc16a13遺伝子改変マウスについて肝細胞内のジアシルグリセロールや中性脂肪などの脂質含量、インスリン受容体基質IRS-1などのリン酸化、糖新生・脂肪酸合成・燃焼経路にある遺伝子発現レベルを野生型やそれぞれの改変マウスと比較して検討する。高脂肪食を負荷して肥満が起きる前に肝脂質蓄積やインスリン抵抗性が惹起されるかどうか経時的に解析を行う。遺伝子改変マウスと野生型マウスの血液・肝臓抽出液をキャピラリー電気泳動-質量分析(CE/MS)によって、両群間で変化が大きい分子を探索する。その上で、過剰発現マウスの肝臓から初代培養肝細胞を分離し、候補物質の経細胞輸送動態を解析して候補物質が基質であるかについて確認する。
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Causes of Carryover |
Slc16a13欠損マウスの出産が予定より遅れたため、関連する消耗品の消費額が予定より少額であったため。Slc16a13欠損マウスの解析を進め次年度の関連消耗品の購入に充てる予定である。
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