2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒト疾患モデルマーモセットを用いたゲノム編集による遺伝子修復治療技術の確立
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16K08642
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
三谷 幸之介 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10270901)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / ゲノム編集 / 免疫不全症 / ウイルスベクター / 疾患モデルマーモセット |
Outline of Annual Research Achievements |
「目的1:ゲノム編集の効率化」 ゲノム編集による遺伝子修復の効率を上げる方法として、切断効率の良いCIRSPR-Cas9の種類の検討と、修復部位を標的とするガイドRNAの検討を行なった。CRISPRタンパク質には一般的に使用されているSpCas9以外にも、サイズが小さくアデノ随伴ウイルスベクターに挿入可能なSaCas9、オフターゲット切断の少ないCpf1などが存在する。それらのCRISPRタンパク質は対応するガイドRNAの配列も異なるため、目標となるIL2RG遺伝子の変異部位を標的とするガイドRNAと合わせて、最も切断活性の高いCRISPRタンパク質とガイドRNAの組み合わせをヒト血球系培養細胞を用いて同定した。さらにそのCRISPRとIL2RG領域の修復用ドナーDNAとを用いて、全細胞の約90%という高頻度で相同組換え修復を達成した。
「目的2:ゲノム編集の安全化」 遺伝子修復の安全性を高める方法として、1) ゲノムワイドなオフターゲット切断部位の同定と、2) shRNAを利用したネガティブ選択法によって修復用ドナーDNA のランダムな部位への組込みを除く方法を検討している。少ない細胞数でゲノムワイドなオフターゲット切断部位を検出するために、CIRCLE-seq法の技術を導入した。CIRCLE-seq法は、対象とするゲノムDNAを環状にした後にCRISPRで切断し、その部位をディープシーケンスすることにより高感度でオフターゲット部位を同定することができる。shRNAを利用したネガティブ選択法については、造血系細胞の生存に関わるBRD4遺伝子に対するshRNAを修復ドナーDNAの末端に挿入することにより、ドナーDNAがランダムにゲノムに組み込まれた場合にはBRD4遺伝子がノックダウンされて細胞の増殖を抑制する。そのための修復用ドナーAAVベクターを構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「目的1:ゲノム編集の効率化」 これまでに樹立したゲノム編集を蛍光の発光(GFP)で安易に測定できる血液系のヒト培養細胞(K562細胞)を用いて、SpCas9、SaCas9、Cpf1などのCRISPRタンパク質を発現するプラスミドと、それらに対応するいくつかのガイドRNAを発現するプラスミドを用いて切断活性の検討を行なったところ、SpCas9を用いた組み合わせで最大60%の蛍光が検出できた。SpCas9タンパク質とガイドRNAをin vitroで直接混合して作るRNP複合体と、蛍光遺伝子を含んだ修復用ドナーDNAをコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてK562細胞に導入すると、切断活性の高いCRISPRの組み合わせで、細胞を選択することなく全細胞の約90%という高効率で遺伝子の組み換えが検出できた。
「目的2:ゲノム編集の安全化」 1) K562細胞から抽出したゲノムDNAを用いて、CIRCLE-seq法の技術を確立させた。Covaris社の超音波破砕機で平均300bpに断片化したゲノムDNAの末端を酵素で修復し、ライゲーションを行うことでゲノム配列由来の環状DNAのライブラリーを作製した。その環状DNAライブラリーにSpCas9とIL2RG遺伝子をターゲットとするガイドRNAのRNP複合体を加えることにより、目的配列とオフターゲット配列を含む環状DNAが切断される。切断されなかった環状DNAを酵素処理で取り除き、切断されたDNAにイルミナ社次世代シーケンサーで解析するためのアダプターを付着させた。その切断DNAライブラリーをPCRで増幅させ、HiSeq X10でシーケンスを行なった。2) shRNAを利用したネガティブ選択法は、BRD4遺伝子に対するshRNA発現カセットを搭載した、IL2RG遺伝子領域の相同配列を持つ修復用ドナーDNAを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
「目的1:ゲノム編集の効率化」 K562細胞を用いてのCRISPRのIL2RG領域の切断活性と蛍光遺伝子を含んだ修復用ドナーDNAを用いた組み換えが成功したので、今後はヒト造血幹細胞を用いた条件検討を行う。同時にマーモセットのIL2RG領域のゲノム配列を組み込んだK562細胞を用いて同様の条件検討を行い、最終的にIL2RGノックアウトマーモセットの造血幹細胞を用いた実験を行う。ノックアウトマーモセットの遺伝子修復の効率は変異部位の配列を次世代シーケンサーで解析し、遺伝子修復が成功した細胞の割合を測定する。最低10%の効率を目標とする。遺伝子修復された造血幹細胞をサイトカイン存在化にメチルセルロース中で培養する(in vitroコロニー法)。コロニー数や細胞種を調べることにより造血幹細胞の活性に影響がないか確認する。
「目的2:ゲノム編集の安全化」 1) K562細胞のゲノムDNAを用いたCIRCLE-seqのシーケンスデータの解析を行う。今後はヒトiPS細胞とマーモセットES細胞から抽出したゲノムDNAを用いて同様にCIRCLE-seq解析を行う。ヒト、マウスにおけるIL2RG領域を標的としたCRISPRのゲノムワイドなオフターゲット候補部位を同定したのちに、K562細胞、ヒト造血幹細胞、マーモセットES細胞に直接CRISPRを導入した場合のオフターゲット候補部位の解析を次世代シーケンサーで行う。2) shRNAを利用したネガティブ選択法は、BRD4遺伝子に対するshRNA発現カセットを搭載した修復用ドナーDNAを導入するためのAAVベクターを産生して、K562細胞で条件検討を行う。BRD4遺伝子の有無でドナーDNAに内包させた蛍光遺伝子の発光量を測定することにより、また、各蛍光陽性細胞でのドナーDNAの組み込み部位を解析することによって、shRNAの有効性を判定する。
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