2018 Fiscal Year Research-status Report
難治性消化器癌におけるSET関連ヒストンメチル化修飾酵素の分子病理学的検討
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16K08647
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
秋山 好光 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (80262187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 真二 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30253420)
島田 周 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20609705)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / 難治性癌 / エピゲノム / ヒストンメチル化 / SETドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストン修飾変化と癌との関連性が注目されており、EZH2やSETDB1を含むSETドメインと呼ばれる保存された領域を持つヒストンメチル化修飾因子(酵素)の発現異常が多くの癌で検出されている。我々は胃癌組織を用いてSET関連遺伝子の一つであるSETDB2の免疫組織化学染色を行い、SETDB2タンパク質が胃癌の約30%で高発現していることを明らかにした。臨床病理学的諸性状との関係ではSETDB2の発現異常頻度は進行胃癌で高く、患者予後が有意に悪かった。機能的解析の結果、SETDB2を強制発現すると、胃癌細胞の増殖および浸潤能が亢進した。更にSETDB2はヒストンH3K9のトリメチル化活性機能を持つことが示唆された。SETDB2は癌抑制遺伝子WWOXとCADM1のプロモーター領域にリクルートされると、その部分のヒストンH3K9トリメチル化を介してこれら遺伝子の発現を抑制していることを明らかにした。またエピジェネティック阻害薬(X)を処理するとSETDB2高発現胃癌細胞株の細胞増殖が低下した。これらの研究は一過性発現実験系であるため、更にレンチウイルスを用いたSETDB2を安定的に発現する胃癌細胞株とゲノム編集法を用いたSETDB2ノックアウト細胞株の樹立を行うことで検証実験を行っている。更にSETDB2と複合体を作るタンパク質を明らかにし、現在解析を進めている。また膵神経内分泌腫瘍におけるDAXX遺伝子の発現低下ヒストンH3K9のトリメチル化の関連、膵癌でのヒストンリジンメチル化酵素KDM6Aの発現低下とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の有効性、および胃癌におけるヒストンアルギニンメチル化酵素PRMT6の発現亢進を明らかにするなど、エピジェネティクス構成因子の異常と臨床病理学的諸因子との関連や機能的役割の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は胃癌におけるSETDB2発現亢進に関する論文発表ができたので、平成29年度はその機能的役割を解析するため、SETDB2のFLAG付きおよびGFP付きベクターを導入した安定発現細胞株とCRISPR/Cas9によるノックアウト細胞株を樹立した。SETDB2高発現細胞株を用いて、免疫沈降法によるSETDB2と結合する因子の探索を行った。またSETDB2を高発現させた細胞株にエピジェネティック治療薬を複数試したところ、一部の治療薬でSETDB2発現抑制と細胞増殖抑制効果が得られた。この治療薬(X)は他のSET関連酵素の阻害剤でもあり、平成30年度は免疫沈降解析を更に進め、SETDB2と複合体形成しているタンパク質(Y)を明らかにした。近年、H3K9トリメチル化に関わるSET関連タンパク質SETDB1とSUV39H1がヒストンシャペロンの1つであるDAXXと結合することが報告された。我々の検討では膵神経内分泌腫瘍においてDAXXは標的遺伝子PCDH7のH3K9トリメチル化を介してがん抑制的に働くことを明らかにした。更に、ヒストンアルギニンメチル化酵素PRMT6とヒストン脱メチル化酵素KDM6の異常がそれぞれ膵臓癌と胃癌で多いことを報告した。マウスの実験系において、KDM6AやPRMT6では造腫瘍性実験を進めたが、SETDB2に関してはやや遅れている。しかし、ヒト組織検体を用いたクロマチン免疫沈降法(Chromatin Immunoprecipitation ChIP)を確立することができるなどの成果が得られるなど全体的には十分な成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
胃癌におけるSETDB2の発現異常を報告したので、引き続き、その機能解析と阻害剤探索を進めている。ヒストン修飾因子の解析においてChIP解析は必須であるが、従来より細胞株を用いた解析が多くの施設で行われているものの、組織検体ではChIPの条件設定が難しかった。本研究において組織を用いたChIP解析が可能になったので、難治性癌組織を用いたヒストン修飾変化の解析を行っている。マウス実験系に関してはSETDB2に関する抗癌剤投与を行うことを計画したが、in vitroでの成果までの到達であり、この部分の未使用額が生じた。現在、いくつかのヒストンSET関連酵素は、複合体(例えば、MLL4はKDM6Aと複合体形成する)を作って機能していることが報告されており、タンパク質間相互作用が注目されている。論文を作成する上でSETDB2の阻害剤についてより詳細に検討すること、および機能的実験(相互作用するタンパク質の解析)の追加が必要となり、最終年度以降も研究を継続することとなった。DAXX、KDM6A、PRMT6とSET関連酵素との相互作用についても検討が必要と考えている。以上の理由をもとに、補助事業期間の延長申請を行い、承認された。
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Causes of Carryover |
(理由)マウスを用いた抗癌剤投与の実験を進める予定であったが、調べたヒストン修飾因子に関して細胞レベルで抗癌剤の特定までには至らず、癌発症マウスでの解析ができないと判断し、この部分の研究計画(癌発症マウスへの薬剤投与の試み)に関する未使用額が生じた。本研究ではKDM6Aにはヒストン脱アセチル化阻害剤が有効であること、SETDB2発現異常を持つ癌細胞では別のヒストン修飾因子に関わる阻害剤が効果を持つ可能性が得られ、本年度の研究は概ね順調に進んでいる。現在、ヒストンSET関連酵素は、複合体(例えば、MLL4/KDM6A複合体やDAXX/SETDB1複合体)を作って機能していることが報告されている。SETDB2と結合する因子の同定とその複合体の機能解析は本研究課題の達成において重要と考えている。そこで上述のマウス実験系の計画を変更し、SETDB2を中心として相互作用するタンパク質の同定を行うこととした。これらの実験は継続中であり、その研究にかかる使用額が生じた。
(使用計画)上記理由により、未使用額の一部はヒストン修飾の機能的解析の追加実験に充てることを予定している。さらにこの研究成果を論文および学会発表するための経費としても使用したい。
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[Journal Article] Comprehensive molecular characterization of liver cancer and inheritance of the phenotypic traits during tumor recurrence.2019
Author(s)
Shimada S, Mogushi K, Akiyama Y, Furuyama T, Watanabe S, Ogura T, Ogawa K, Ono H, Mitsunori Y, Ban D, Kudo A, Arii S, Tanabe M, Wands JR, Tanaka S.
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Journal Title
EBioMedicine
Volume: 40
Pages: 457-470
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] A subset of diffuse-type gastric cancer is susceptible to mTOR inhibitors and checkpoint inhibitors.2019
Author(s)
Fukamachi H, Kim S-K, Koh J, Lee HS, Sasaki Y, Yamashita K, Nishikawaji T, Shimada S, Akiyama Y, Byeon SJ, Bae D-H, Okuno K, Nakagawa M, Tanioka T, Inokuchi M, Kawachi H, Tsuchiya K, Kojima K, Tokino T, Eishi Y, Kim YS, Kim WH, Yuasa Y, Tanaka S.
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Journal Title
Journal of Experimental & Clinical Cancer Research
Volume: 38
Pages: 127
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] FABP4 overexpression in intratumoral hepatic stellate cells within hepatocellular carcinoma with metabolic risk factors.2018
Author(s)
Chiyonobu N, Shimada S, Akiyama Y, Mogushi K, Itoh M, Akahoshi K, Matsumura S, Ogawa K, Ono H, Mitsunori Y, Ban D, Kudo A, Arii S, Suganami T, Yamaoka S, Ogawa Y, Tanabe M, Tanaka S.
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Journal Title
American Journal of Pathology
Volume: 188
Pages: 1213-1224
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Tumor suppressor functions of DAXX through histone H3.3/H3K9me3 pathway in pancreatic neuroendocrine tumors.2018
Author(s)
Ueda H*, Akiyama Y*, Shimada S, Mogushi K, Matsumura S, Mitsunori Y, Aihara A, Ban D, Ochiai T, Kudo A, Tanabe M, Tanaka S.
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Journal Title
Endocrine-Related Cancer
Volume: 25
Pages: 619-631
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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