2017 Fiscal Year Research-status Report
膵癌の浸潤に関わる新規がん抑制遺伝子DUSP4の機能解明と治療応用
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16K08651
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
泥谷 直樹 大分大学, 医学部, 准教授 (80305036)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膵癌 / DUSP4 / MAPキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで私は、膵上皮内癌と浸潤癌のゲノムコピー数異常を網羅的に比較解析することで、膵上皮内癌が浸潤癌に進展する過程で、第8番染色体短腕(8p)が欠失し、その領域に存在するDUSP4の発現が低下していることを見出した。本年度はDUSP4の発現低下の機能的意義をあきらかにするために、膵癌細胞株及び膵管上皮不死化細胞を用いて、DUSP4を導入あるいは発現抑制させることで変動するシグナルパスウェイの同定を試みた。 1.DUSP4導入によるMAPキナーゼシグナルパスウェイの抑制 8pの欠失に伴いDUSP4の発現が低下している膵癌細胞株にレンチウイルスベクターを用いてDUSP4を一過性に導入すると、3種のMAPキナーゼ(ERK, p38およびJNK)の活性化が抑制された。 2.DUSP4発現の抑制によるERKの活性化 DUSP4の発現が保たれている膵管上皮不死化細胞でsiRNAを用いてDUSP4の発現を抑制すると、MAPキナーゼパスウェイのうちERKのパスウェイが優位に不活化され、p38およびJNKの活性化レベルはほとんど変化しなかった。さらにDUSP4発現が保持されている膵癌細胞株を用いてDUSP4に対するshRNAを安定的に発現する細胞株を樹立し、親株と比較したところ、ERKの活性化レベルの亢進を認めた。 以上の結果から、DUSP4の発現が低下した膵癌細胞ではMAPキナーゼ、特にERK優位の活性化が生じて、浸潤能や生存能の獲得に寄与していることが明らかとなった。また活性化しているERKパスウェイは膵癌の有望な治療標的となり得ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の本年度の研究項目は以下の通りであった。 1.8p欠失の伴いDUSP4発現が低下している膵癌細胞株にDUSP4を導入してシグナルパスウェイの変動を調べる。 2.DUSP4発現を保持している膵管上皮細胞および膵癌細胞株にDUSP4を導入してシグナルパスウェイの変動を調べる。 このうち1についてはレンチウイルスベクターを用いてDUSP4発現レンチウイルスを作製し、これを細胞に感染させることで導入効率が改善できた。さらにDUSP4を安定的に発現する細胞株を樹立して、免疫不全マウスを用いたヒト膵癌細胞株移植・治療モデルを構築しているところである。2についてはhTERTの導入により不死化したヒト膵管上皮細胞を入手して実験材料とした。またCGH解析および網羅的発現解析によりDUSP4発現が保持されている膵癌細胞株を複数同定して、それらの中からPK-59細胞を選択してDUSP4-shRNAを安定的に発現する細胞株を樹立した。この細胞についても来年度に移植・治療実験を施行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果より、8p欠失に伴うDUSP4の発現低下はERKパスウェイを活性化させ、それによって膵癌細胞は浸潤能や生存能を獲得していることが明らかとなった。そこで来年度はERKパスウェイを標的とした治療法が膵癌において有効か否かについて検証する。 1.in vitroにおける治療効果の検討 培養している膵癌細胞にERKパスウェイ阻害剤を添加して、ERKの活性化レベルや増殖能、浸潤能、生存能、遊走能等への影響を調べる。また阻害剤のオフターゲット効果の可能性を否定するためにERKパスウェイ上の分子のドミナントネガティブクローンを作製・導入して確認する。 2.in vivoにおける治療効果の検討 免疫不全マウスを用いてヒト膵癌細胞同所移植モデルを構築する。このモデルに阻害剤を投与して腫瘍増殖能や転移巣形成能、生存期間への影響を調べる。
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