2016 Fiscal Year Research-status Report
膵がん免疫微小環境における血管内皮細胞の役割と機能制御
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16K08663
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
石川 義典 (猪野義典) 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (90291137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 伸介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (40276217)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がんの免疫微小環境 / 膵がん / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの免疫微小環境はがんの生物学にとって重要な役割を持つ。免疫微小環境の特性はがん組織への免疫細胞浸潤に反映され、免疫細胞の間質浸潤には血管機能の重要性が示唆されている。本研究では膵がん免疫微小環境における血管内皮細胞の役割と機能制御の理解を目指して、がん組織内の血管内皮細胞と免疫細胞浸潤との関係ならびにその機序を明らかにすることを目的にする。ヒト膵がん組織解析を出発点として、免疫細胞浸潤に関わる血管内皮細胞に発現する遺伝子・分子を同定し、その機能解析を進める。in vitro 実験系、in vivo 実験系、その遺伝子を血管内皮細胞に発現するトランスジェニックマウス作成と化学発がん系等を用いて、がん免疫微小環境形成における役割や機序について解析を進める。その分子の臨床病理学的な意義も検討する。初年度は、膵がん組織の免疫細胞浸潤と血管型や腫瘍内の位置との関係性を解析し、本研究ターゲットとすべき血管内皮細胞を明らかにする。膵がんおよび慢性膵炎組織内の血管内皮細胞について、網羅的遺伝子発現解析を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がんの重要な生物学的特性は、がん細胞、がん間質、または両者の相互作用によって規定される。がん間質を構成する一員として免疫担当細胞があり、それによるがん微小環境に与える影響は大きく、このがん免疫微少環境が形成される分子機構を理解し、それをコントロールすることが出来れば、新たながん治療に繋がるものと確信される。 1.膵がん組織および慢性膵炎組織において、免疫細胞浸潤に関わる血管内皮細胞に発現する遺伝子(分子)の同定と解析については膵がん組織あるいは慢性膵炎組織から単離した血管内皮細胞の網羅的遺伝子発現解析に関する進捗状況については現在外科切除された新鮮膵腫瘍組織・非腫瘍組織170検体を集めた。検体は術後直ぐに細切細断し酵素処理を行い、遊離した細胞を先ずCD45抗体付きマグネットビーズで前処理し、マクロファージを除いた後、CD31 抗体付マグネットビーズにて血管内皮細胞を単離しマイクロアレイ解析までマイナス80度で保存した。また、検体の純度を確認するために検体処理後スメアーを作成し、CD31抗体を用い免役染色を行い純度の確認を行った。回収した内皮細胞検体のうち、非腫瘍6例と、膵腫瘍10例から全RNA を抽出、Rib-SPIA 増幅法(NuGEN Technologies)により増幅後、マイクロアレイSurePrint G3, Agilentを用いマイクロアレイ実施した。また、膵がん微小環境及び膵がん組織に浸潤する免疫細胞分布の定量的検討については現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1・ マイクロアレイ解析は、回収した内皮細胞のうち、非腫瘍6例と、膵腫瘍10例から全RNA を抽出、Rib-SPIA 増幅法(NuGEN Technologies)により増幅後、マイクロアレイSurePrint G3, Agilentを用いマイクロアレイ実施した。これらの解析はGene Springsにより膵がん微小環境の影響を受けたと思われる遺伝子群を抽出する。抽出された遺伝子群については膵がん100例においてRT-PCRにて発現を確認後予後検定をおこない膵がん微小環境との関わりを検証する。2. 免疫細胞浸潤と関係の深い遺伝子(分子)の同定と確認。網羅的遺伝子発現解析結果を比較して、免疫細胞浸潤と関係の深い発現遺伝子を推定する。さらに、遺伝子発現変化を別の約50 例を用いて、定量的RT-PCR 法により再現性を確認する。2.免疫細胞浸潤と関係の深い遺伝子/分子の解析において得た候補遺伝子によりコードされている分子について、既知の情報を集め、また各血管や神経における遺伝子及びそのコード分子発現、さらにin vitro 実験系(化学走化性等)、invivo 実験系(同分子を安定発現させた培養細胞の同種移植モデルによる解析等)によりその分子機能を解析する。候補分子が酵素の場合はその反応産物について検討する。候補分子が低分子の場合は当センター質量顕微鏡(iMScope, Shimadzu)を用い解析する。3.トランスジェニックマウス作成とマウス膵がん細胞移植モデル・マウス化学発がん系を用いた分子機能解析。1において有力な分子が得られたならば、その遺伝子をTie2 プロモーターあるいはVE-Cadherinプロモーター下で血管内皮細胞に発現させるトランスジェニックマウス(TG マウス)を作成し、マウス膵がん移植モデルあるいは皮膚化学発がん系にて目的分子の機能を解析する。
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Causes of Carryover |
実験遂行に当たり、3年の実験計画で有るために当年で支出が多い場合は実験の遂行が困難とみなし、最小限度に留めて実験を遂行した為の使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度の遺伝子解析が終了しているので、実際の遺伝子解析抽出と定量を行うと同時に蛋白の発現を検討する。
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