2016 Fiscal Year Research-status Report
炎症性筋線維芽細胞腫瘍の新規融合遺伝子の同定と機能の解明
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16K08669
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山元 英崇 九州大学, 大学病院, 准教授 (30404073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 炎症性筋線維芽細胞腫瘍 / 融合遺伝子 / ALK / ROS1 |
Outline of Annual Research Achievements |
中間悪性腫瘍である炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor; IMT)の約50%はALK融合遺伝子を有していることが知られていた。ALKは受容体チロシンキナーゼの一種で融合遺伝子を形成することで、融合遺伝子産物が過剰発現し、かつ、キナーゼ活性が亢進するため、腫瘍発生の原因となると考えられている。ALK蛋白発現やALK融合遺伝子(遺伝子再構成)の証明は、病理診断や治療方針の決定に役立つ。ROS1はALKと構造的に類似した受容体チロシンキナーゼで、肺癌ではALKやROS1融合遺伝子が存在することが知られており、それらのキナーゼ阻害薬が治療に用いられている。IMTの少数例でROS1融合遺伝子が報告されたが、詳細は明らかになっていなかった。我々は、IMT36例を解析し、免疫組織化学染色にてALK, ROS1はそれぞれ22例(61.1%)、2例(5.6%)において陽性であった。ROS1陽性2例はいずれも腹腔内(小腸間膜、大腸)に発生し、うち1例において、RT-PCRにてTFG-ROS1融合遺伝子を同定できた。また2例において、FISH法にてETV6遺伝子再構成が同定されたが、それらはいずれも肺発生であった。1例ではRT-PCRにてETV6-NTRK3融合遺伝子が同定されたが、もう一例では融合相手遺伝子は同定できなかった。以上のように、これまで報告と合致してIMTの50-60%程度はALK融合遺伝子を有するが、それぞれ5%程度はROS1あるいはETV6(一部はETV6-NTRK3)の融合遺伝子を有することが示唆された。また発生臓器により、融合遺伝子亜型の違いがある可能性も示唆された。これらの融合遺伝子亜型の同定は確定診断や治療方針の決定に役立つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IMTにおいて既知のALK融合遺伝子に加え、新たにROS1やNTRK3の融合遺伝子を同定できたことにより、当該年度の目標を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
IMTのうち、ALK, ROS1, ETV6(NTRK3)以外の融合遺伝子が存在する可能性があるため、免疫染色や分子病理学的手法を用いて、それらの同定を行う予定である。またIMTと鑑別診断に挙がる、組織形態学的に類似した腫瘍についても融合遺伝子や特異的遺伝子変異、免疫染色への応用などを検討する予定である。
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Research Products
(1 results)