2016 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性疾患患者に発生するリンパ増殖性疾患の病態解明と治療効果予測因子の同定
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16K08683
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畑中 佳奈子 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (10399834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (30589924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自己免疫性疾患関連リンパ増殖性疾患 / 腫瘍微小環境 / DNAメチル化 / 治療効果予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性疾患(autoimmune disease; AID)患者の治療では,様々な免疫抑制剤や生物学的製剤が使用されるが,それに伴いリンパ増殖性疾患(lymphoproliferative disorder; LPD)が発症することが知られている.このAID-LPDは比較的新しい概念であり,成因として, Epstein-Barrウイルス(EBV)への感染,関節リウマチなどAID治療薬による免疫低下などが指摘されているが,AID-LPDの病態解明や治療選択に関する研究は未だ十分に進んでいない.本研究では,AID-LPDのうち,とくに臨床的に問題となる悪性リンパ腫に着目し,(a)通常の悪性リンパ腫との比較によりその生物学的特性を明らかにし,(b)既存の治療における治療効果予測因子を網羅的遺伝子発現解析により見出し,(c)さらに同定された治療効果予測因子(バイオマーカー)の臨床病理学的意義を免疫組織化学的検討により,また治療標的としての妥当性をin vitroの検討により明らかにする.本年度は以下の2課題に取り組んだ. [1] びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫(DLBCL)症例の組織マイクロアレイ(TMA)標本の作製:パイロット研究のためのAID-DLBCL 5例とnon-AID-DLBCL 124例からなるTMA標本を作製した. [2] DLBCL TMA標本を用いた悪性リンパ腫における腫瘍細胞のメチル化状態とその微小環境に関する臨床病理学的検討:AID発症に関与していることが知られているDNAメチル化と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および腫瘍関連マクロファージ(TMA)動態の関係性について,まずnon-AID-DLBCLを中心とした基礎検討を行った.DNAメチル化については, 5-hydroxymethylsytosine(5-hmC)に対する抗体を用いてIHC解析を行ったところ,高メチル化群では,CD4陽性,CD8陽性およびFOXP3陽性TIL数高値を示し,有意な関連性が認められた(p=0.002, 0.013, 0.007).また高メチル化は, STAT3およびATMリン酸化と相関し, p53蓄積とは逆相関した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究目的の達成のため,1年目にあたる平成28年度は,当初の予定を一部変更し,[1] DLBCL症例を用いたTMA標本の作製,[2] そのDLBCL TMA標本を用いた悪性リンパ腫における腫瘍細胞のメチル化状態とその微小環境に関する臨床病理学的検討を計画した. [1]については,2009年~2013年まで北海道大学病院にてAID-LPDとして診断された21症例のうち、AID-DLBCLと診断された症例は13症例(Hans分類:NGC type 10例、GC type 2例、NOS 1例)で,そのうちTMA作製に供することが可能だった症例はわずか5例であった. このため[2]については,今回はnon-AID-DLBCLを中心とした基礎検討が主となってしまい,遅れを生じることとなった. 今年度の研究の進捗については,こうした状況を鑑み,自己点検による評価の区分を(3)とした.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる平成29年度においては,AID-DLBCLを中心とした検討が実施できるよう,症例の追加を行い,以下の2点について検討を行い,AID-DLBCLの生物学特性を明らかにする. ① AIDに関係するTh1細胞とTh17細胞およびそれらの分化に関与するサイトカイン(IL-12およびIL-6など)について検討を行う ② またDNAメチル化においては,5-mCから5-hmCへの変換の妨げと5mCの蓄積に関与するIDH1, IDH2, TET (ten-eleven transolation) 2の変異について検討を行う
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Causes of Carryover |
上記IHC解析の実施に遅延が発生し,これを次年度に行うこととしたため,翌年度に一部使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度同様,次年度も主に物品費に充てる予定であり,費目別には以下のように計画している.【物品費】IHC関連試薬を購入する予定である.一方,設備備品費は,研究代表者が所属する部門に主要な研究設備が整っており,新たな設備備品の購入は考えていない.【旅費】使用予定はない.【人件費・謝金】該当なし.【その他】本研究で得られた成果を,学会誌等へ投稿することを予定している. 研究推進にあたっては,計画に基づき実験を進めていき,研究費を有効活用したい.
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation following reduced-intensity conditioning for mycosis fungoides and Sezary syndrome.2016
Author(s)
Shiratori S, Fujimoto K, Nishimura M, Hatanaka KC, Kosugi-Kanaya M, Okada K, Sugita J, Shigematsu A, Hashimoto D, Endo T, Kondo T, Abe R, Hashino S, Matsuno Y, Shimizu H, Teshima T.
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Journal Title
Hematol Oncol.
Volume: 34
Pages: 9-16
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A pilot study of operational tolerance with a regulatory T-cell-based cell therapy in living donor liver transplantation.2016
Author(s)
Todo S, Yamashita K, Goto R, Zaitsu M, Nagatsu A, Oura T, Watanabe M, Aoyagi T, Suzuki T, Shimamura T, Kamiyama T, Sato N, Sugita J, Hatanaka K, Bashuda H, Habu S, Demetris AJ, Okumura K.
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Journal Title
Hepatology
Volume: 64
Pages: 632-643
DOI
Peer Reviewed
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