2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子コピー数プロファイルによる非浸潤性乳腺・大腸腫瘍の進展リスク予知
Project/Area Number |
16K08689
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
杉原 洋行 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30171169)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アレイCGH解析 / 乳癌 / 大腸癌 / 階層的クラスタリング / 進展リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は、乳腺腫瘍については、先行して蓄積していたデータと合わせ、最終的にDCIS 24例、浸潤性乳管癌(IDC)33例、乳頭腫12例の解析を完了した。しかし症例間の結果のばらつきが当初の予想より大きく、これらを2群に分けて再現性を評価することが困難と判断し、すべてを合わせてクラスタ解析を行った。内部対照として同一症例のサンプルが隣接するかどうかを、サイズの大きな遺伝子と蛋白をコードしている遺伝子で比較すると、前者ではすべての症例で隣接する条件を決定できたが、後者では特に転移巣が(late eventsの影響で)原発巣から離れる傾向のため、決定できなかった。そのため、以後はサイズの大きな遺伝子を使うこととした。その結果、各サンプルの遺伝子コピー数プロファイル(CNP)は二つ(AとB)のクラスタに分かれた。AはBよりもIDC/DCIS比、核グレードが高く、Her2陽性のすべてを含み、進展リスクが高いと考えられた。一方、luminal A-likeはBに有意に多かった。AとBの識別に有用な乳癌関連遺伝子を9遺伝子特定した。染色体レベルでは、DCISとIDCの間でCNPの差は(これまでの報告と同様)ほとんどなかったが、クラスタごとに染色体レベルのCNPを比較すると、DCISにはなく、IDCで出現する変化が抽出でき、それはAとBで異なった(この系譜特異性のためにこれまで抽出できなかったと考えられる。) 大腸については左側に限定し、手術材料とESD材料各20例を目標に、前者は症例当り3-5サンプル後者は2-3サンプルの採取を続ける一方、MSI陽性例を除外するために、ミスマッチ修復関連抗原の免疫染色を行っている。28年度に解析が終了したのは手術材料12症例32サンプルである。染色体CNPはI型よりも0型がII型に近く、腺腫成分を含む5例中3例で腺腫成分と癌で同一の変化を含んでいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・乳癌では、予定通り、初年度に解析対象症例のゲノムDNAコピー数データが揃った。解析が進むにつれて、early eventに基づくコピー数プロファイルの特徴をつかむことが重要であることがわかってきた。そのためにはprotein-coding genesよりも、large sized genesの方がプロファイルのクラスタリングに適していることも分かった。クラスタ間の差に寄与している、進展リスク予知に有用な遺伝子が明らかになってきた。乳頭腫についても、その1/2にゲノム不安定性があり、更にその一部にTP53のloss があり、それらの揃った乳頭主の一部に、微小なDCISのfocusが見つかっている。 ・大腸癌では1/3弱の症例でゲノムDNAコピー数のデータが得られた。現在結果待ちのものも加えると、ほぼ順調にデータが得られている。今後はESD材料でも腺腫成分を含めてサンプリングし、腺腫も含めて解析を進める。クラスタリングを行うのは解析数が20例以上に増加してからである。
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Strategy for Future Research Activity |
・当初の計画通り、研究を推進できそうである。 ・ただ、進展リスク予知は、本研究で行うゲノムコピー数プロファイルの解析で完結するものではなく、本研究が次世代シークエンスでの同様の研究のガイドとなりうると考えている。
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Causes of Carryover |
マイクロアレイ解析の経費は16サンプル単位で支出するため、最終的に中途半端な額が残った。それを、他の経費に流用するのではなく、次年度の経費と合わせてマイクロアレイ解析に使用するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の経費と合わせてマイクロアレイ解析に充当する。
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