2016 Fiscal Year Research-status Report
新規エネルギー代謝関連分子WDR6による老化制御機構と新たな老化病態モデル構築
Project/Area Number |
16K08713
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小松 利光 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 技術職員 (70380962)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
Keywords | 遺伝性疾患 / カロリー制限 / WDR6 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インスリンシグナルに関与する新規代謝調節因子WDR6の遺伝子改変マウスを作出し、老化病態並びにカロリー制限の抗老化効果におけるWDR6の機能を明らかにすることである。平成28年研究実施計画では、全身性及び脳特異的WDR6 KOマウスの戻し交配が終了し、実験集団の作出を完了している予定であったが、予定通りに交配が進まなかったため本年度末に10世代目の全身性WDR6 KOマウス系統を得るに留まっている。脳特異的WDR6 KOマウスは7世代目であり、戻し交配完了には時間を要する。先行して作製した12ヶ月齢の全身性WDR6 KOマウスモデルでは、計画前の予備実験で観察された12ヶ月齢での著しい老化病態が観察されなかったため、この時点で予定していた安楽死および臓器収集を中止し、老化病態の観察される時期の見極めと寿命観察を行った。老化病態の程度に違いは見られず、24ヶ月齢の時点でAL群の寿命に有意な差はない。CR群ではKOマウスが野生型より長寿傾向にあるが、現時点で統計的な有意差はない。計画前の予備検討とは異なる観察結果が見られた原因として考えられるのは、使用したマウスの遺伝的背景が統一されていないため、安定的な再現結果を得られなかった可能性がある。 計画前に作出した予備実験サンプルを使用し、視床下部・脂肪における代謝関連遺伝子群の発現を定量した結果、KOの視床下部では摂食亢進ペプチドNPY、AGRPが顕著に上昇しておりKOマウスの摂食量増大と一致した。脂肪では脂質合成系遺伝子のChREBP、ACC、FASが増加しており摂食量の増大と一致しているが、脂肪量の減少とは相反する。WDR6の欠損が代謝に影響を与えている可能性が大きいことが示唆されたことから、戻し交配済み実験群を用いてより詳細な検討を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予定していた戻し交配の進捗が予定通り進まず、年度末に戻し交配10世代目の全身性WDR6 KOマウス系統を得ることが出来た。そのため、28年度に予定していた戻し交配終了後の実験集団を用いた各実験計画は行われておらず、遅延している。 脳特異的WDR6 KOマウス集団においては、戻し交配が7世代目で停滞しており、10世代目まで完了して実験に使用するには時間を要する。 戻し交配せずに先行して作製された全身性KOマウスモデルにおいては、計画前の予備実験で観察された12ヶ月齢での著しい老化病態が観察されなかったため、この時点で予定していた安楽死および臓器収集を中止し、老化病態の観察される時期の見極めと寿命観察を行ったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、戻し交配済みKOマウスを用いて、平成28年に作製予定であった6,12,24ヶ月齢の経時的実験集団と寿命観察集団を作製する。生後12週齢からカロリー制限を開始し、摂食、体重、血糖値等を経時的に測定する。 KOマウスからMEFを分離、あるいは培養細胞にWDR6 siRNAを導入し、細胞老化への影響を解析する。細胞老化の程度はSA-beta-gal assayとp16の定量的PCRで評価する。さらに、細胞老化におけるWDR6とIRS、Eps8、laminAの結合とその機能を解析する。またプロジェリン、γH2AXなどの免疫染色等でラミノパシー様の変化が生じるか検証する。
|