2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K08714
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 甲状腺 / 放射線発がん / 発がんリスク / ゲノム不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 放射線誘発甲状腺発がんとオートファジー関連遺伝子 被曝後16ヶ月後の発がん率は若齢で44.4%(対照0%)、高齢では14.3%(対照14.3%)と、若齢被曝で有意に高率であった。ラット甲状腺がん組織でのオートファジー調整因子とオートファジー構成因子の発現をリアルタイムRT-PCRにより解析した。結果として、被曝群ではCxcr4, Cdkn2a, Ctss, Tnfの発現が増加し、若週齢被曝群ではTgfb1の発現増加が見られた。一方、オートファゴゾーム形成に必須の構成因子Atg4b, Atg5は若齢被曝群で発現低下を認めた。オートファジー誘導は放射線照射後ストレス下での適応反応の可能性があり、加齢によるオートファジー不全が、若齢被曝の発がんリスク亢進因子の候補として示唆される。 2) ラット放射線誘発甲状腺発がんリスク亢進の分子刻印探索 7週齢ラットにX線0.1, 1, 4Gyを前頚部局所照射後6、12、16ヶ月後に甲状腺を摘除しRNAを抽出、遺伝子発現を網羅的にmicroarray解析し、判明した遺伝子変化を定量RT-PCRで確認した。非照射群では腫瘍発生は認めず、照射群では16ヶ月後に0.1, 1, 4Gy照射で各々4, 16.6, 33.3%に発がんを認めた。4Gy照射16ヶ月後の非腫瘍組織では610遺伝子の発現増加があり、ATM関連DNA損傷応答や細胞周期調節系の有意な変化を認めた。非照射群と比較し照射群では腫瘍、非腫瘍組織ともに、ATMと53BP1発現は低下、cdkn1a発現は亢進、cldn9発現は低下を示すことが判明した。放射線被曝甲状腺のがん化にはDNA損傷応答の低下、細胞老化亢進、細胞接着因子の低下が寄与していて、これらの分子発現の変化はradiation signatureとなる可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ラット放射線誘発甲状腺がんモデルを用いて、低線量から高線量影響を含め、発がん前から浸潤がんに至るDNA異常の蓄積とRNA発現を網羅的に解析し、発がん亢進の放射線刻印を明らかにすることを目的とする。現在までに、発がんモデル動物を作製し、6、12、16ヶ月と経時的に甲状腺を摘出、がん部と非がん部より病理組織標本の作製と核酸・蛋白抽出を完了し、被曝後甲状腺組織の経時的組織障害の解析を実施している。①病理組織学的検索、②細胞増殖能の指標としてのKi-67陽性細胞数の定量、③細胞死の指標としてのTUNEL陽性細胞数の定量およびWestern blotによるリン酸化p53、p21、cleaved caspase-3 の定量、④オートファジー関連分子解析LC3-IIとp62の定量と電子顕微鏡によるオートファゴソームの形態観察、⑤オートファジー関連分子の網羅的解析で判明した変動のみられる因子発現のリアルタイムRT-PCRによる放射線甲状腺がん組織での確認は完了した。結果として、加齢によるオートファジー不全が、発がんリスク亢進因子の候補として示された。さらに、放射線誘発甲状腺発がんリスク亢進の分子刻印探索のため、遺伝子発現を網羅的にmicroarray解析し、放射線被曝後甲状腺のがん化にはDNA損傷応答の低下、細胞老化亢進、細胞接着因子の低下が寄与していることが判明した。いくつかの因子の変動パターンが放射線刻印の候補となることが示され、その同定に着実に近づいている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 現在までに、明らかになったオートファジー不全に関与する分子異常や放射線刻印候補因子の発現量を、放射線被曝線量と経過時間でプロットし、その発現パターンを統計量として決定する。決定した発現量について、ラット放射線誘発甲状腺がんモデルを別に1セット作製してverifyする。試料は連結匿名化した上で解析し、一致率の特異度と感度を算出して、放射線刻印としての有用性を評価する。 2)申請書の計画に従って、次の方法で被曝後甲状腺組織での経時的ゲノム異常を定量する。①DNA 損傷応答分子 p53-binding protein 1(53BP1)蛍光免疫染色核内フォーカス数による内因性DNA二重鎖切断の定量、②Western blotによる非相同末端連結(Non-homologous end-joining: NHEJ)に働くKu70、Ku80やArtemis、相同末端連結 (Homologous recombination: HR)に働くRAD51 の定量によるDNA損傷修復異常、③Rat Genome CGHマイクロアレイキットを用いたaCGH法による網羅的DNAコピー数異常解析、④市販プローブを用いたFISH法によるゲノム構造異常の同定。この解析で、被曝後甲状腺組織発がん過程でのゲノム不安定性の関与が定量的に明らかになる。
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[Journal Article] Association between p53-binding protein 1 expression and genomic instability in oncocytic follicular adenoma of the thyroid2016
Author(s)
Mussazhanova Z, Akazawa Y, Matsuda K, Shichijo K, Miura S, Otsubo R, Oikawa M, Yoshiura KI, Mitsutake N, Rogounovitch T, Saenko V, Kozykenova Z, Zhetpisbaev B, Shabdarbaeva D, Sayakenov N, Amantayev B, Kondo H, Ito M, Nakashima M
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Journal Title
Endocrine Journal
Volume: 63
Pages: 457-467
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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